てんでんこ…“大津波から逃げ切った子たち”の実話を絵本にした埼玉の児童文学作家、岩手・釜石の住民と交流続け作品に 震災知らない世代、増えても「被災地で語ってもらったことをつないでいく」
鴻巣市の児童文学作家、指田和さん(58)は、東日本大震災で大津波から逃れた子どもたちの実話を描いた絵本「つなみてんでんこ はしれ、上へ!」(ポプラ社)などのノンフィクション作品で知られる。津波の被害を受けた岩手県釜石市に足を運び続け、住民への取材や交流を通して、命を守る大切さを伝え続けている。
■防災学習
指田さんは出版社で子ども雑誌や家庭雑誌などの編集を担当した後、フリーとなり、各地の震災被災地や被爆地の広島などを取材してきた。阪神大震災が題材の「あの日をわすれない はるかのひまわり」や「ヒロシマ 消えたかぞく」など、現地で取材した事実を作品にまとめている。
東日本大震災から2カ月後の2011年5月、いとこ一家が住む釜石市へ足を運んだ。現地の避難所で子どもたちの世話をするボランティア活動に参加し、校舎が津波で壊滅的な被害を受けた同市立鵜住居小の児童らと出会った。震災発生時、学校にいた児童らは近くの釜石東中の生徒らと自主的に高台に避難し、全員が助かったことから「釜石の奇跡」とメディアで取り上げられた。
指田さんは子どもたちと接していく中で「みんな特別ではなく本当に普通の子どもたち。こんなに小さな子たちがどうやって逃げ切ったの?」と関心を抱いた。当時の避難の様子や、日頃から取り組んでいた防災学習などについて学校関係者や児童生徒らに取材を重ね、13年に「つなみてんでんこ―」を発表した。
作品では、真っ黒な津波が迫る中、児童らが標高50メートルの峠へ約2キロにわたり駆け上って避難した様子を描いた。釜石東中の生徒のアイデアで震災前に地域で配布された「安否札」が活用され、助かった住民の話なども盛り込んだ。命を守るために自ら考え、行動した子どもたちの姿を伝えている。
その後も釜石の住民と交流を続け、子どもたちの心のケアや、盆野球の行事の復活を題材に2冊の絵本を出版した。
■歌や踊りも
一昨年には震災後に生まれ、語り部として活動する鵜住居小の児童を訪問。津波から命を守るために作られた防災ソング「てんでんこのうた」に、児童らが振りを付けたダンスを指田さんも一緒に踊った。「子どもたちが防災を楽しみながら学ぶきっかけになれば」と、鴻巣市の県防災学習センターの企画展で動画を紹介している。
講演や絵本の読み聞かせなど、さまざまな形で震災の記憶を伝えている。「各地で大きな地震が発生し、被災地と呼ばれる場所が増えている。災害はいつどこで遭遇するか分からない。命を守るための訓練や心構えが大切だということを伝え続けていきたい」
震災を知らない世代も増えていく中、「被災地から信頼して語ってもらったことをつないでいくことが自分の役割。自分ができることを精いっぱいこれからも続けていきたい」と力を込めた。









