世界のクルド人、絵本に 文筆家の金井真紀さん、「ひとくくり」偏見やめて
文筆家、イラストレーターの金井真紀さん(52)は、今月刊行された小学生向け月刊誌「たくさんのふしぎ」(福音館書店)で、埼玉県をはじめ世界各地で暮らすクルド人の特集を手がけた。各国の現地取材を基に文化や日常生活、歴史について、イラストを中心に紹介し、大人でも読み応えのある一冊に仕上がった。国内では近年、特定の人種の外国人に対して偏見などによる誹謗(ひぼう)中傷が後を絶たない。多くのクルド人と会った金井さんは「ひとくくりにして負のイメージを押し付けないで」と訴える。
取材は約3年かけて、埼玉県に加えてイランやイラク、英国、ドイツに足を運んだほか、ビデオ電話などを含めると全7カ国に及んだ。県内では、さいたま市で毎年3月に行われる新年を祝う祭り「ネウロズ」を中心に、伝統的な踊りやドレス、食文化をイラストとともに伝えた。
国外の取材対象は、これまでにも国内外の外国人に焦点を当てた書籍を刊行してきた経験を生かし、自身のネットワークで開拓した。最も印象深かったのはイランと隣国のイラクの違い。イランの集住地域であるマリーバーンは田舎の牧歌的な印象を受けたが、車で30分しか離れていない国境を越えたイラクのスレイマニヤはビルなどが立ち並ぶ大都会。同じクルド人の居住地域とは思えず、国境の身勝手さを痛感した。
各地域での違いは他にも多岐にわたる。言語や仕事だけでなく、住宅や身に着ける服装など「暮らしぶり」という言葉だけで片付けられないことに気付いた。一方、どの地域のクルド人も自分たちのアイデンティティーを強く持っていることは同じだった。「国を持っていないとアイデンティティーを感じる機会がとても少ない。ネウロズなどの祭りは、彼らにとってとても大きな意味があると実感した」
取材活動をした3年の間で、国内ではクルド人に対する誹謗中傷が相次いだ。県内外の匿名の人物から交流サイト(SNS)を通じてデマや偏見が拡散されたり、さいたま市でのネウロズにも政治団体や他の市議会議員らによる妨害が起こった。8日に投開票された衆院選などの選挙戦でも、選挙権を持たない外国人を誹謗中傷する候補者もいた。「当初はヘイトスピーチのようなものはなかったのに、なぜなのか」と、疑問が消えない。
さまざまな国のクルド人と出会って強く感じたことは、クルド人はひとくくりで語れないことだった。「よくクルド人は『怖い』とか、『かわいそう』といったイメージで語られることがあるが、当然いろいろな人がいる」と話す。自分自身も属性のイメージで論じてしまうことがあると明かし、「誰でも持っている意識を自覚することが大切ではないか。この本を通じて、広い視野で考えてみてほしい」と呼びかけた。
月刊「たくさんのふしぎ」2026年3月号「世界でくらすクルドの人たち」(税込み810円)。










