埼玉新聞

 

夫死亡、おの2本たたきつけられる…妻と娘も死亡 頭・首を狙った近所の男、法廷で「知らない」 車を傷つけ、賠償を求められ報復感情か「襲う直前に防カメを切断」 弁護士「精神疾患で無罪」 過去に不起訴も

  • 夫婦と長女の3人が殺害された現場の住宅=2023年1月23日午前、飯能市美杉台

    夫婦と長女の3人が殺害された現場の住宅=2023年1月23日午前、飯能市美杉台

  • 男の自宅=2022年12月29日午後、飯能市美杉台(一部加工しています)

    男の自宅=2022年12月29日午後、飯能市美杉台(一部加工しています)

  • ブルーシートで覆われた被害者宅。一帯は規制線が張られ続け、警察車両も止まっている=2023年2月16日午前、飯能市美杉台

    ブルーシートで覆われた被害者宅。一帯は規制線が張られ続け、警察車両も止まっている=2023年2月16日午前、飯能市美杉台

  • 男女3人が殺害された住宅周辺を捜査する警官ら。現場は閑静な住宅街で、近隣には中学校(写真奥)もある=2022年12月25日午前、埼玉県飯能市美杉台

    男女3人が殺害された住宅周辺を捜査する警官ら。現場は閑静な住宅街で、近隣には中学校(写真奥)もある=2022年12月25日午前、埼玉県飯能市美杉台

  • 夫婦と長女の3人が殺害された現場の住宅=2023年1月23日午前、飯能市美杉台
  • 男の自宅=2022年12月29日午後、飯能市美杉台(一部加工しています)
  • ブルーシートで覆われた被害者宅。一帯は規制線が張られ続け、警察車両も止まっている=2023年2月16日午前、飯能市美杉台
  • 男女3人が殺害された住宅周辺を捜査する警官ら。現場は閑静な住宅街で、近隣には中学校(写真奥)もある=2022年12月25日午前、埼玉県飯能市美杉台

 2022年12月、飯能市の住宅で住民の夫婦と帰省中だった長女の親子3人が殺害された事件で、殺人、非現住建造物等放火、銃刀法違反の罪に問われた、無職男(43)の裁判員裁判の初公判が16日、さいたま地裁(井下田英樹裁判長)で開かれた。男は「知らないことです」と起訴内容を否認した。刑事責任能力の有無が主な争点となり、検察側は完全責任能力があるとし、弁護側は心神喪失だったとして無罪を主張した。

 検察側は冒頭陳述で、男と被害者らは約60メートル離れた場所に住んでおり、事件前に被害者の車が傷つけられる器物損壊事件が発生し、男が逮捕されていたと説明。損害賠償を求められるなど、被害者らに対し、より強い報復感情を抱いていたと指摘した。

 男が殺人の犯行当時、精神疾患だったことに争いはないとした上で、半年以上前から凶器を準備したり、犯行直前に被害者の敷地内に設置された防犯カメラの配線を切断するなど「善悪の判断を判断する能力はあった」と完全責任能力を主張。犯行後、被告方のクローゼットなどから凶器とみられるおのや犯行時の着衣が発見され、「責任回避の行動をしている」とした。

 動機についての証拠はこれまでに得られておらず、被告人質問でも供述は得られないと説明。他責思考など男の特性や報復感情を踏まえ、「態様の残虐性、結果の重大性に着目してほしい」と述べた。

 弁護側は「非常に重大な事件だ」とする一方、被告について「犯人ではありません。犯人だと判断されても、事件当時は心神喪失状態だった」と主張。「精神疾患の圧倒的な影響があり、責任能力はなく、無罪です」と述べ、精神鑑定の結果を踏まえて無罪を主張していく方針を示した。

 さいたま地検は23年2月13日から、刑事責任の有無を判断する鑑定留置を2度にわたって計10カ月実施。起訴後も弁護側の申し立てで、さいたま地裁により約3カ月の精神鑑定が実施された。

 起訴状などによると、男は22年12月25日午前7時10分から25分ごろまでの間、飯能市美杉台4丁目の住宅で、米国籍の夫(69)と妻(68)、長女(32)=いずれも当時=の頭や首などをおので複数回殴打し、殺害したとされる。また、同住宅の室内に灯油をまいて何らかの方法で火を放ち、1階リビングの天井などを焼損させ、正当な理由がないのにおの2本を携帯したとされる。

■うつむき表情変えず 「刺激証拠」加工し提示

 飯能の親子3人殺害事件は16日、さいたま地裁で初公判が開かれ、67席の傍聴券を求めて80人が列を作った。男は青のダウンジャケットと黒のズボンを身に着け入廷。始終うつむき気味で表情を変えることはなかった。

 検察側の証拠調べでは、男が親子3人を殺害する様子が写された防犯カメラの映像を扱った。遺体などの映像は、裁判員に心理的な負担を与える可能性のある「刺激証拠」で、検察側は映像を静止画にして、血痕などを加工。男や被害者の言動は検察官が読み上げた。

 検察側の説明によると、男は当初、台車を押すなどして何度か往復しながら被害者方に現れると、玄関前に設置された防犯カメラの配線を切断。その後庭に侵入し、異変を察知して居室内から出てきた親子に次々と襲いかかったとされる。

 男方から押収された衣服も示され、犯行時の防犯カメラに写った男と酷似していると説明。男が事件前につづったとされるノートの一部も証拠として採用され、殺人をほのめかす内容や欧米への反感を表す内容が書かれていたという。

■どんな事件だった 刑事責任能力を問えると判断(以下2023年12月24日配信、起訴時の記事)

 2022年12月、飯能市の住宅敷地内で住民の夫婦と帰省中の長女の計3人が殺害された事件で、さいたま地検は2023年12月21日、殺人や非現住建造物等放火、銃刀法違反の罪で、近所の無職の男(41)=同市美杉台4丁目=をさいたま地裁に起訴した。裁判員裁判で審理される。

 地検は男の事件当時の精神状態を調べる鑑定留置を2023年2月13日から2度目の延長を経て、8月4日まで実施。さらに同10日から2度目を始め、1度の延長を挟んで12月15日に終えていた。地検は計10カ月に及んだ鑑定留置の結果、男の刑事責任能力を問えると判断した。

 起訴状などによると、2022年12月25日午前7時過ぎ、飯能市美杉台4丁目の住宅敷地内で米国籍の男性=当時(69)=に対し、おの(刃体の長さ約7・5センチ)の刃を頭部などに複数回たたきつけた上、別のおの(同約9・8センチ)で後頸部(けいぶ)などを複数回殴打し、死亡させた。さらに、同おので妻=同(68)=と長女=同(32)=の頸部などを複数回殴って殺害した後、住宅内に灯油をまき、火を放って1階リビング天井などを焼損(面積計約22・8平方メートル)させたなどとされる。

 地検は男の認否を明らかにしていないが、8月10日に非現住建造物等放火と銃刀法違反の疑いで追送検された際の県警の調べには、殺人容疑を含め全ての容疑について「やっていない」と否認。捜査関係者によると、鑑定留置終了後の県警の調べに対しても、これまでと同様に容疑を否認していたという。動機に関しても一切語っていない。

 男は、昨年1月に男性方に止められていた車などに投石し、傷を付けたとして器物損壊容疑で現行犯逮捕された。男性方では一昨年8~12月にも車や門扉を傷つけられる被害が計6回あり、その後、昨年2月までに同容疑で2度再逮捕されたが、いずれも供述を拒み続け、嫌疑不十分で不起訴となっていた。

 事件発生から、間もなく1年。鑑定留置が計10カ月間にわたって実施された後の今回の起訴を受け、男の担当弁護士は「被疑者段階で鑑定留置を2回行うことは担当事件の中では初めて。おそらく全国的にも異例中の異例なのではないか。鑑定書を確認した上で、これからの方針を検討したい」と話している。

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