埼玉新聞

 

<高校野球>天国の捕手、対戦両校に親友「まさか対戦させてくれたのか」 延長戦に ずっと忘れぬ…母感謝

  • 狭山経済のベンチに掲げられた堀内宥希さんのユニホームと帽子(左)=13日、川越初雁球場

 (埼玉大会=13日・川越初雁)

 「まさに、巡り合わせの対戦だった」。川越初雁球場で13日に行われた狭山経済―所沢商の2回戦。狭山経済の大沢承慶選手(2年)と、所沢商の河野大輝選手(3年)は試合後の取材で同じ言葉を口にした。昨年8月、狭山経済の野球部員、堀内宥希さん=当時(15)=は交通事故で亡くなった。野球を通して堀内さんと親友だった両校の選手は「天国で見届けてくれたはず」と話した。

 1年生で捕手だった堀内さんは昨年8月19日朝、自転車で部活に向かう途中に、入間市の横断歩道で乗用車にはねられ、命を落とした。

 堀内さんの事故後、狭山経済の部員たちは、練習前や試合前に必ず黙とうをささげている。この日のベンチの壁には、堀内さんのユニホームと帽子を掲げて戦った。

 試合は延長十一回、接戦の末、所沢商が勝利した。堀内さんと同学年の大沢選手は親友のことを思いながら「今日の試合は24人の部員が心を一つにして臨んだ」と話す。試合は負けてしまったが「これからもチームみんなで宥希の気持ちを背負いながら戦っていく」と前を見据えた。

 所沢商の河野選手は「まさか初戦で狭山経済と当たるとは思っていなかった」と複雑な胸の内を明かした。堀内さんとは小、中学校と一緒で、よく野球について語り合ったという。「今日は堀内君のためにもヒットを打つと決めていた。狭山経済のためにも、次の試合も絶対に勝つ」と力を込めた。

 中学校の時に堀内さんとバッテリーを組んだことがある所沢商の吉岡悠翔選手(2年)は、スタンドから試合を見守った。「堀内君が自分たちと対戦させてくれたのではないかと、運命を感じた。きっと天国でこの試合を見届けてくれたはず」と話した。

 狭山経済の応援に駆け付けた堀内さんの母節子さん(46)は「選手たちがいつまでも宥希を忘れないという気持ちで試合に臨んでくれている」と感謝していた。

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