埼玉新聞

 

地デジ難民…テレビ視聴が困難な埼玉の山間部 衛星中継放送を用いた実証実験 住民運営で山頂アンテナから各家庭にテレビ信号を配信する「自主共聴」で視聴 「多くの課題が…組合単独での運営は無理」

  • 従来の地上波放送と衛星中継放送の違いを見比べる小鹿野町の住民=17日午後、小鹿野町藤倉地区の集会場

    従来の地上波放送と衛星中継放送の違いを見比べる小鹿野町の住民=17日午後、小鹿野町藤倉地区の集会場

  • 【地図】小鹿野町(背景薄緑)

    小鹿野町の位置

  • 従来の地上波放送と衛星中継放送の違いを見比べる小鹿野町の住民=17日午後、小鹿野町藤倉地区の集会場
  • 【地図】小鹿野町(背景薄緑)

 山間などの地形的な理由で地上波デジタルのテレビ視聴が困難な地デジ難民世帯(難視聴地域)に該当する、埼玉県小鹿野町の藤倉地区で16日から2日間、衛星中継放送を用いた実証実験が行われた。総務省から委託を受けたNTTドコモビジネス(東京都千代田区)が、同地区の集会場に大型テレビ2台を設置。参加住民は、従来の地上波放送と、衛星を中継した新たなテレビ放送を見比べ、課題点を同社に伝えた。住民の意見は全国のテレビ受信環境の改善に向けた資料になる。町内のテレビ組合役員は「組合組織がなくても、街中のようにアンテナ1本でテレビが見られる環境を整えてほしい」と願っている。

 2011年に地上アナログから地上デジタル放送へ切り替わって以降、小鹿野町内の約4分の1の住民が、現在も自宅家屋に電波が届かない地デジ難民だ。町内山間部の藤倉、三山河原沢、上薄、小森の4地区(計436世帯)の各テレビ組合は、09年に東京電力から共同受信施設の譲渡を受け、住民運営で山頂アンテナから各家庭にテレビ信号を配信する「自主共聴」でテレビ視聴を行っている。

 同4地区の組合は、東電から預かった設備管理費と、地区住民から徴収している月500~1000円の会費で共聴施設の運用を行っているが、組合員の減少や日常の保守点検にかかる固定費などがかさみ、厳しい運営が続く。

 町は23年度以降、自主共聴組合の運営費の一部を支援する補助金制度を導入。24年度の事業費は157万円だった。小森地区テレビ共同受信組合長の粂和夫さん(70)は「町の補助のおかげで何とか維持できているが、設備の老朽化や機器の生産終了など、多くの課題が山積し、組合単独での運営は無理」と説明する。

 自主共聴は全国に約9700施設(23年総務省発表)あり、同省は地上デジタル放送を難視聴地域に届ける新たな方法として、今回のテレビ信号の中継局をつなぐ電波の代わりに衛星波で伝送する「衛星放送波中継」も代替案の一つに挙げている。今回の実証実験は、東京都の奥多摩町でも行われる。

 藤倉地区の会場には同4地区の住民約100人が参加。普段、自宅で見ているテレビ映像と、衛星放送波中継の映像を視聴し、画質や音声で気になる点などをアンケート用紙に記入した。参加住民の宮前明良さん(64)は「映像や音の違いはあるが、衛星放送でも視聴に影響はない印象。テレビ組合役員の運営の苦労や、組合費の高騰で生活苦に陥っている年金暮らしの住民を見てきているので、一刻も早い環境改善を望む」と話していた。

 同4地区のテレビ組合役員は「地上波テレビは山間地域の住民にとって貴重な情報源であり、娯楽の一つ。今回の取り組みが最終的な解決につながるわけではないが、実証実験の会場に選ばれ、多くの住民が関心を持ってくれたことは大きな前進。全国各地で同じ状況に苦しんでいる過疎地域の住民を救うため、国に頑張ってほしい」と期待を込めた。

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