蛇口をひねるとお酒が…居酒屋と銭湯、昭和の世界観 埼玉の商店街に誕生した「大衆酒泉テルマエ」 アルコール離れが進む若者に特化した“逆張り”の営業戦略
食材や人件費高騰で苦境に立たされる飲食業界において、エンターテインメント性に富んだ店舗設計で巻き返しを図る店がある。昨年末に川越市のクレアモール商店街に誕生した「大衆酒泉テルマエ」は、誰もが気軽に立ち寄れる「大衆居酒屋」と昭和の「銭湯」の世界観を掛け合わせた体験・ストーリー型の飲食店。アルコール離れが進む若者に特化した“逆張り”の営業戦略で店舗数を伸ばしている。
■タイパ&コスパ
「酒泉わいてます」―。店内にはどこか懐かしいネオン管の文字がやさしくともる。内装は大衆浴場を思わせるタイル張りの壁や風呂おけのピッチャー(酒器)、器具など細部に至るまで昭和の世界観で統一。壁一面にはウイスキーや焼酎、梅酒など13種類のドリンクが流れ出る「蛇口」が取り付けられ、1時間398円(税別)からの飲み放題や串焼き(とり皮)1本70円(同)といったタイムパフォーマンス(時間帯効果)やコストパフォーマンス(費用対効果)抜群のメニューを取りそろえている。
■Z世代が反応
客自身が好みの酒を注ぐセルフスタイルは、コロナ禍の2021年に名古屋の個室居酒屋を業態変更する際に導入したのがきっかけ。宴会需要がほぼゼロとなる中、人件費などの固定費削減でひねり出した苦肉の策だった。
店のメインターゲットは20代前半の若年層。低価格帯と非日常の飲食体験はコスパ・タイパに敏感な若者にすぐに“刺さった”。昨今、若者のアルコール離れが進むとされるが、来店客の実に7割がZ世代(1990年代半ば~2010年代序盤生まれ)。業績不振だった名古屋の店舗は当月から売上が3倍に回復したという。
■ほかにない体験を
現在、「テルマエ」は全国に19店舗(フランチャイズ店含む)、県内では川越のほか、所沢、大宮に計3店舗ある。
競合の飲食店がひしめく繁華街にあっても、「他店との明確な差別化で十分勝負できる」と運営会社BIRCH(東京都品川区)の高橋光基社長(31)。動画映えするおけ盛り料理の開発や交流サイト(SNS)での情報発信など、緻密なマーケティング戦略も事欠かない。
「本川越駅クレアモール泉」(FC店)オーナーの渡辺靖之代表(49)は「自分で好きなドリンクを選ぶ楽しさはほかにない魅力。県内有数の観光地川越で付加価値の高い飲食空間を提供したい」と話している。
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大衆酒泉テルマエは、川越市新富町1の19の2、第64東京ビル2階。午後4時~午前0時、無休。問い合わせは、同店(電話049・298・7003)へ。










