問われる大型公共工事 再公告、計画の見直しも/相次いだ入札不調 さいたま市
大型公共工事の入札不調が全国的な問題となっている昨今。人手不足や資材価格、労務単価の上昇などが背景にあるとみられている。さいたま市でも例外ではなく、今年1年は重要な施設で入札不調が相次いだ。
2月にはJR武蔵浦和駅周辺に計画する小中一貫の義務教育学校整備事業で、新校舎建設工事の入札に参加する業者がおらず不調に。市契約課によると、さいたま市誕生以来、国内外の企業を問わずに参加できる世界貿易機関(WTO)案件の建設工事の入札不調は初めてだったという。
2028年4月の当初の開校スケジュールに間に合わせるため、予定価格を1回目から約14億円(10%)増額する約163億円に、工期も2週間延長するなど要件を緩和し4月に再公告したが、5月の開札前に参加申請のあった2者が辞退。開校を遅らせざるを得ない事態に追い込まれた。
さらに、6月には中央区役所や与野図書館など区役所周辺の計8施設を一体的に再整備する計画に続いて、市が同区の与野中央公園内に計画する5千人規模収容のアリーナ建設を含む「(仮称)次世代型スポーツ施設」整備事業の入札手続き中止を発表。今年1月に29年12月の開業を目指し、民間事業者に設計から施工、30年間の運営などを一括して任せる方式で約130億円で入札公告したが、参加者から辞退届が提出された。
各事業で入札不調後に参画意向のあった事業者などからヒアリングを実施し、内容を分析した結果、主な原因の一つに事業者が算出する事業費と市の予定価格が大きく乖離(かいり)していたことが判明。ただ、以降の対応方針は分かれた。
義務教育学校整備については、入札公告期間や工期の大幅延長、民間ノウハウに基づき技術提案を受ける「入札時VE方式」の採用など発注方法の見直しのほか、29年度までの継続費を工事費など約51億円を上乗せして約271億円に増額。26年4月以降に3回目の入札公告を行う見込みで、30年4月開校を目指し工事日程を組む。中央区役所周辺再編事業も設計・建設・解体期間の1年延長や想定事業費を当初の約314億円から1・8倍弱にするなどして26年3月に再公告する意向だ。
だが、次世代型スポーツ施設整備に関しては、清水勇人市長が市議会12月定例会で計画見直しを表明した。区役所周辺再編に伴い解体する与野体育館の機能を継ぐ新体育館を公園内に整備する一方で、興行用アリーナの建設はいったん白紙に。物価高騰による黒字化に向けた事業運営の見通しの不透明さを挙げ、財政負担の大幅増が見込まれることから、事業の優先度を検討し「柔軟、適切に見直す必要があると判断した」と答弁した。
先が見えない物価上昇の中で、今後も地下鉄7号線延伸や市庁舎移転などの大規模計画が待ち受ける。市食肉中央卸売市場・と畜場(大宮区)移転再整備のように建設費高騰と食肉市場を取り巻く環境の変化を鑑み、費用対効果が見合わないとして入札段階に行く前に断念した事業もある。
清水市長は公共事業の進め方について「施設ごとに役割があるので限りある財源の中で何を優先していくべきか。少し遅らせたり、やり方を変えたり、見直しも含め、さまざまな視点から検討して結論を出す必要がある」とし、民間活力や国の補助制度の活用も含め「いかに市の財政負担を抑えるか。知恵を出しながらやっていかないといけない時期を迎えている」と語った。
【入札不調回避の取り組みと入札不調率】 さいたま市では繁忙期に工事が集中しないよう発注時期の工夫や、参加者が積算など準備に充てるため公告から入札までの期間の十分な確保のほか、提出書類の電子化や技術者の常駐義務緩和に取り組む。市契約課によると、同課が取り扱う競争入札の建設工事の入札不調率は過去5年(2020~24年度)で7・05%、5・10%、6・95%、4・83%、4・77%。25年度は10月末時点で4・29%(489件中21件)と改善傾向にある。中央区役所周辺公共施設再編と次世代型スポーツ施設整備事業は民間資金を活用したPFI方式を採用したため、この数には含まれない。









