埼玉新聞

 

不信招き不登校が長期化 さいたま市いじめ再調査 学校対応の甘さ批判

  • 清水勇人市長(左)に答申書を手渡す市いじめ問題再調査委員会の市川須美子委員長(左から2人目)ら委員=22日午前、さいたま市役所

    清水勇人市長(左)に答申書を手渡す市いじめ問題再調査委員会の市川須美子委員長(左から2人目)ら委員=22日午前、さいたま市役所

  • 清水勇人市長(左)に答申書を手渡す市いじめ問題再調査委員会の市川須美子委員長(左から2人目)ら委員=22日午前、さいたま市役所

 さいたま市立小学校で2021年度にいじめの重大事態として認定された事案について、いじめ防止対策推進法に基づく市長による再調査を行う第三者委員会の報告書が22日、公表された。再調査委員会の市川須美子委員長(獨協大学名誉教授)=教育法=は会見で「不登校はいじめが原因だが、学校や教育委員会の対応の問題点が被害者側の不信感を招き、不登校の長期化を招いた」と厳しく批判した。

 市子ども・青少年政策課などによると、20年度に当時小学2年の男子児童が同級生からいじめを受け、21年度に不登校になり重大事態と認定された。23年5月に学校側は市教委と調査報告書をまとめたが、被害者側は内容を不服として、再調査を求める意見書を清水勇人市長に提出。市が同年10月にいじめ問題再調査委員会条例を制定以降、同委員会への諮問は初となった。

 再調査委は、被害児童や加害児童ら関係者延べ35人への聞き取りなど昨年4月から今年11月まで44回実施。学校主体調査で確認された事実を整理し、左目横をパンチされた行為など5件をいじめと認定した。被害者側に丁寧な聴取が行われず“被害者証言不在”で進み、調査範囲が狭かった点などの問題を指摘。再発防止へ学校主体調査の水準の向上が不可欠とし、いじめ調査と不登校対策組織の分離などの改善の必要性を強調した。

 被害者は現在中学1年。市が公表した再調査結果報告書への所見の中で一時期、友人と過ごしたくて無理して登校したが、学校が軽いいじめとして対応したことで、4~6年ではほとんど学校に行けなかった苦しさを記している。

 今は公立中学の校内教育支援センターに週に2、3日通っているという。自身の経験を通じ「いじめが発覚した時にごまかしたり、うそをついたりせず、逃げずに子どもを助けてください」などとし「子どもの声は聞こえにくいのですが一番大切です」と思いを込めた。

 清水市長は謝罪した上で、取材に「いじめの長期化、重大化を防止できる体制を構築したい」と述べた。竹居秀子教育長も「小学校に通えず大切な時間が失われてしまったことを重く受け止めている」と謝罪。清水市長から要請された提言を踏まえた対応について、来年1月20日に方針を公表するとした。

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