街中に残るコンクリートの巨大な建物…老朽化により閉鎖後もそのまま残る旧市庁舎と文化会館 跡地利活用の検討へアイデア募集 埼玉・所沢 「地域のにぎわいや回遊性を生むような場所に」
所沢市宮本町の中心市街地エリアを歩くと、コンクリートの巨大な建物が目に入る。高度経済成長期に建てられ、老朽化により閉館したもののそのまま残されている市役所旧庁舎と旧市文化会館だ。市は跡地の利活用を検討するため、10月から民間事業者のアイデアを募集した。建物は2029年度末までに解体する見通しで、地域のにぎわいや回遊性を向上する活用策を模索する。
旧市庁舎は1968年に完成。地下1階、地上5階建てで、敷地面積は約4420平方メートル。約18年間市役所として使用されたが、人口の急増に伴い事務スペースが足りなくなり、同市並木の米軍所沢通信基地の第1次返還の地に移転した。移転後は商工会議所や公共施設管理公社など市の関連団体が利用したが、老朽化で2018年5月に閉鎖。隣接する旧市文化会館は1970年に竣工(しゅんこう)し、敷地面積約2315平方メートル。同じく老朽化により2010年3月に閉館した。
■市街地にそのまま
旧市庁舎と旧市文化会館は西武線所沢駅、航空公園駅、西所沢駅から約0・7~1・2キロ離れた中間地点にあり、所沢駅から商店や高層マンションが立ち並ぶ大通りを抜けた、住宅と店舗が混在する市街地エリア。正面にはスーパーマーケット、裏手には自然に囲まれた所沢神明社があり、交通量も多い。両館の閉館後は長年、さまざまな用途を検討するとして、解体せずそのままになっていた。
市は10月から、民間事業者のアイデアなどを募り、利活用方法について検討するサウンディング型市場調査を開始。「歩いて楽しめる、街を巡る面白さがある」「心地よさや居場所、つながりがある」などをテーマに掲げ、提案を求めた。調査内容の一部は来年1月に公表する予定で、その後はさらなる調査や市民からの意見も求め、正式な公募を27年度に実施する見通しだ。
■廃虚みたいだけど
建物周辺は緩い坂道で、存在感のあるコンクリートの外壁に、石積みの塀や柵がそのまま残る。立ち入り禁止の標示があり、無数の窓のブラインドの隙間からは暗く無人の内部の様子が垣間見える。近くに住む女性(60)は「廃虚みたいになってしまったけれど、建物が大きくて立派で、なくなってしまうとなると寂しい。建物が残ればいいなと思う」と苦笑する。
15年に実施された当時の跡地利用に関する市民アンケートでは、商業、娯楽施設や、保育所や児童館など育児支援施設を求める声が多かった。所沢駅前には映画館のある大型商業施設が完成し、当時と周辺の環境は異なるものの、有効活用への市民の期待度は高い。市経営企画課の担当者は、「地域のにぎわいや回遊性を生むような場所にしたい」と話した。










