埼玉新聞

 

女子トイレに生理用品を常設 きっかけはコロナ禍での「生理の貧困」 子どもたちが安心して過ごせるのであれば…「思春期に寄り添う」活動5年目 さいたまの第二東中学校の今、さらに次世代へつながる流れを

  • 各個室に設置されている生理用品について説明する元PTA会長の荒川ゆり子さん

    各個室に設置されている生理用品について説明する元PTA会長の荒川ゆり子さん=さいたま市大宮区の市立第二東中学校

  • 各個室に設置されている生理用品について説明する元PTA会長の荒川ゆり子さん

 さいたま市立第二東中学校では2021年秋、他校に先駆けて女子トイレの全個室に生理用品が常設された。「思春期に寄り添い、生徒が安心できる環境を整えたい」と願う保護者の思いから始まった活動は5年目を迎える。当時の思いや活動の今を取材した。

■トイレに生理用品を

 設置のきっかけは、コロナ禍で「生理の貧困」問題がクローズアップされたことだった。さいたま市は21年3月、保健室に備蓄を追加して必要な子どもたちに届けようと全市立学校に生理用品を配布した。

 「『貧困で生理用品が買えません』って取りに来る子がいるだろうか」。当時PTA会長だった荒川ゆり子さん(47)は疑問に感じた。中学生であれば、学校での初潮や突然の生理に慌てることもあるだろう。生理用品をかばんから取り出すことに恥ずかしさを感じる子も少なくない。「トイレに生理用品があれば、そこで解決できる。生理の貧困も含めて思春期の子どもたちに向き合う活動をしたい」

 PTAで話し合った上で、会費で1年分の生理用品を購入し、女子トイレの全個室に設置することを決めた。

■活動を続けて

 生理用品は各個室の専用箱にセットされ、保護者と生徒が定期的に補充する。毎月の使用数は200個前後。2年目以降は、体育祭や保護者会の時に保護者から生理用品の寄付を募っている。現PTA会長の森邦雄さん(45)によると、今年は約1600個が集まった。「気持ちが分かるから寄付します」と言ってくれる男子生徒の母親も多いという。

 続けていく中では、「あるのが当たり前になって頼りすぎるのはどうなのか」「自分で用意すべきでは」といった声が寄せられることもある。荒川さんは「やめようかなと一瞬思ったこともあるが、体育祭の日に保護者が重い荷物とともにナプキンを持ってきてくれる。そして毎月200個前後が使われているという現実を見て、子どもたちが安心して過ごせるのであればいいのかなと感じている」と打ち明け、途切れることなく活動が続いていることを喜ぶ。

■つながる思い

 「いたずらがあったら中止」。開始当初の学校との約束だ。失敗が許されない中で、荒川さんたちは思いを真っすぐに伝える活動に力を入れた。開始前には、設置の意図が書かれた手紙を封筒に入れ、一人一人の女子生徒に贈った。保護者アプリを通じて、設置の様子なども随時配信した。

 これまでいたずらは一件もなく、今では使用した分を後日返してくれる生徒もいるという。同中3年の市村愛莉さん(15)は「お母さんたちが生理用品をトイレに運んでくれているのを見ると安心する。大切に使おうという気持ちが湧いてくる」と感謝する。

 いずれ生徒たちも大人になる。「寄り添う大人がいたなと、ふと思い出してくれたら」と荒川さん。現PTA会長の森さんは「思いを分かち合うことは、子どもの成長につながる。その思いを受けた子どもたちから、さらに下の世代につながっていくという流れをつくりたい」と力を込める。

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