「情報は平等」理念に40周年 聞き手に内容を正確に 埼玉・久喜の音訳ボランティア団体 市報や市議会だより、社協だよりなど音訳 視覚障害者の生活をサポート
久喜市のボランティア団体「久喜市音訳の会コスモスライブラリー」が今年、結成40周年を迎えた。市の広報紙や図書の内容を音声化し、視覚障害者の生活をサポート。コロナ禍の危機も乗り越え、活動を継続してきた。技術の進歩で音訳を取り巻く環境は変わったが、「情報に接する権利は誰でも平等」という理念は今も変わらない。
発足は1985年。前会長の榎本恭子さん(85)が「視覚障害者のために本を読んでほしい」と頼まれたのが結成のきっかけだった。朗読技術を磨くため、久喜市社会福祉協議会に依頼して講習会を開催してもらい、参加者のうち19人で立ち上げた。
当時はそれぞれの自宅で録音していたが、現在は専用の対面朗読室を備えた同市青毛の公共施設「ふれあいセンター久喜」を拠点に活動。35人のメンバーで市報や市議会だより、社協だよりのほか、個人から依頼される図書の音訳も担っている。
読み手の解釈や感情が込められる朗読に対し、音訳は聞き手に内容を正確に伝えることを第一義とする。「音の高低や文章の切れ目が変わると、別の意味として伝わってしまう場合がある。正しく伝わるよう常に考えながら読まなければならない」と現会長の綾戸康子さん(70)。
会には「聴きやすく、毎日楽しみにしている」「音訳から情景が浮かんできた」といった感謝の言葉が寄せられ、励みになっている。榎本さんは「40年続けられたのはみんなが同じ目標を持ち、良いものを作ろうと頑張っているから」と振り返る。
最大の危機はコロナ禍で同センターが閉鎖された時だった。「緊急時に一番、届きにくい人たちに情報が届かなくなってしまう」。事態を案じたメンバーは一時的に施設を使用できるよう担当者に掛け合い、感染防止対策を徹底して活動を継続した。
カセットテープに録音していた音声は2005年から段階的にデジタル化。パソコンを使って音声データを編集し、記録媒体もCDに変わった。人工知能(AI)の発達で自動音声化の技術も進歩し、音訳の在り方も問われている。
綾戸さんは「人にしかできない、声による音訳をするのが私たちの仕事。時代の流れにきちんと対応しながら、今後も実力を磨いて取り組んでいきたい」と語った。
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「久喜市音訳の会コスモスライブラリー」の結成40周年を記念し、全盲の日本語教師でアジア視覚障害者教育協会会長の青木陽子さん=さいたま市見沼区在住=による講演会「終わりなきレジスタンス」が11月29日午後2時から、ふれあいセンター久喜で開かれる。参加無料。定員100人。問い合わせは、メールで同会(kukicosmos@gmail.com)へ。










