埼玉新聞

 

日本最初の職業漫画家「北沢楽天」収集の美術品公開 さいたまの漫画会館で展示 貴重なコレクション50点が一堂に

  • 石田留美子学芸員(左から3人目)の解説を聞く参加者ら=さいたま市北区のさいたま市立漫画会館

 さいたま市ゆかりの漫画家・北沢楽天が生前に集めた絵画や浮世絵版画の美術品、漫画関連資料など約50点を展示した「収蔵品展 楽天コレクション」が同市北区の市立漫画会館で開催されている。いずれも、日本最初の職業漫画家として一世を風靡(ふうび)した楽天の交友関係などを知ることができる貴重な資料で、9月21日には学芸員が楽しく解説する「ギャラリートーク」も実施された。

 ひときわ目を引くボタンと黒猫が描かれた美しいびょうぶは、山口蓬春の妻春子による作品だ。楽天の下で日本画を学び、夫妻に養女のように愛されたという春子。同館の石田留美子学芸員(46)は「楽天と一緒に東京で開かれた蓬春の展覧会を見に行った。その時に蓬春が春子に一目ぼれしたのがなれ初めと言われている」とエピソードを披露した。びょうぶの横には蓬春の掛け軸も飾られ、石田さんは「ひな祭りやこいのぼりなど、季節を感じさせる掛け軸が多い。季節ごとに楽天に贈っていたのではないか」と推察した。

 そのほか、石井柏亭や弟鶴三の作品も。幼くして父を亡くし、兄が眼病を患った後、鶴三は家計を支えるために東京美術学校(現東京芸術大学)に在学しながら、楽天が主筆する漫画雑誌「東京パック」で働いた。東京パックでは、後にさまざまな分野で活躍する学生が活躍し、給与のほかに特別賞として報奨金を支払った記録もあるという。苦学生や才能ある若い画家を支援していた、楽天の一面がうかがえる。

 ギャラリートークに参加した越谷市の福田泰之さん(66)は「これだけのものを収集していたと知り、楽天の芸術の奥深さを改めて感じた」と話した。

 収蔵品展は11月30日まで。午前9時~午後4時半。月曜休館(祝日の場合は開館、翌平日休み)。入館無料。11月16日、来年1月18日には特別イベント「山口蓬春リレートーク」も予定されている。

 問い合わせは、同館(電話048・663・1541)へ。

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