埼玉新聞

 

校舎外周に電気柵…バスジャック、暴動など想定した訓練は年5回 南アフリカ・日本人学校、日本では考えられない環境 人一倍責任感と成長意欲が強い生徒ら、さまざまな人と交流 国際感覚を身に付ける

  • 日本の子どもたちが学んでいる教室を紹介する高橋大輔さん

    日本の子どもたちが学んでいる教室を紹介する高橋大輔さん=8月1日、南アフリカ・ヨハネスブルグ市のヨハネスブルグ日本人学校

  • 日本の子どもたちが学んでいる教室を紹介する高橋大輔さん

 南アフリカ最大の商工業都市・ヨハネスブルグに校舎を構える「ヨハネスブルグ日本人学校」(渡島郁弘校長)の教壇に、本年度からふじみ野市出身の数学教諭、高橋大輔さん(40)が立っている。「生徒たちは、『自分たちで学校を支えなければ』という責任感と成長意欲が人一倍強い。南アの暮らしに、なじむための教養と、日本文化に触れる教育の場を提供することが、私たちの使命」と、高橋さんは語る。

 同校は文部科学省の認定を受けた教育機関で、来年8月に開校60周年を迎える。日本各地から派遣された教員が、南アに暮らす日本人ら小学~中学部の児童生徒に対し、日本の小中学校と同等の教育を行っている。9月時の児童(小学部)は24人、生徒(中学部)は4人。

 中学部の担任を務める高橋さんは、栄東高校(さいたま市)卒業後、東京理科大学へ進学し、大阪府の公立教員採用試験に合格。府内の教育委員会や中学校教諭を経て、今年4月から同日本人学校に着任した。任期は3年の予定。

 「南アでの教育指導は、なにもかもが新鮮。日本での当たり前が、ここでは当たり前でないことに日々気付かされている」

 校舎は標高約1700メートルの緑に囲まれ、閑静な住宅地に位置するが、街中では強盗などの犯罪が多発し、治安の悪さが問題になっている。同校では防犯対策として、校舎外周に電気柵を張り、バスジャック、侵入、暴動などを想定した避難訓練を年5回ほど実施している。

 「日本では考えられない環境下ではあるが、さまざまな人との交流を通じて国際感覚を身に付けているので、日本と南アの両国に愛着を持っている児童生徒は多い」

 同校は国際協力機構(JICA)などの協力を得て、国際交流教育を年6回ほど実施。児童生徒は、だるまさんがころんだ、折り紙、けん玉、ソーラン節など日本の娯楽文化について、現地の子どもたちに英語でプレゼンして一緒に遊び、地域連携と自身の語学力を高めている。

 「少数制の中で、中学部の生徒がリーダーシップを発揮し、居心地の良い環境をつくってくれている。教員もそれぞれ地元が異なるので、任期中にさまざまな文化を吸収したい」。高橋さんは晴れやかに語った。

ツイート シェア シェア