「硫化水素で下水管が腐食」 埼玉・八潮陥没 原因究明委が中間報告 現場付近の下水道管は腐食でコンクリートの表面が剥落 継ぎ手部分の露出・破損・脱落を確認
埼玉県八潮市で県道が陥没しトラックが転落した事故で、有識者9人で構成する原因究明委員会(委員長・藤野陽三城西大学学長)は4日、東京都内で第3回会議を開き、道路陥没の原因として「県が管理する中川流域下水道の硫化水素によって腐食した下水道管に起因するものと考えられる」と結論づける中間報告を公表した。年内にも最終報告を取りまとめる方針。
委員会では、(1)小規模な隙間から空洞が発生・拡大し、道路陥没後に下水道管が崩壊(2)小規模な隙間から空洞が発生・拡大し、下水道管が崩壊後に道路陥没(3)下水道管が崩壊して急激に陥没―の三つのシナリオを想定して議論を行い、現地調査、意見聴取、模型実験、化学分析および構造解析の結果などから(1)もしくは(2)のプロセスが有力であると判断した。
下水道管の構造は、管の外側で土圧・水圧に抵抗する鉄筋コンクリートの構造部材である一次覆工と、防水・防食のために一次覆工の内側に巻かれる無筋コンクリートの二次覆工で構成される。
陥没箇所付近のマンホールは約2メートルの高低差があることで硫化水素濃度が高くなりやすく、事故現場から回収した(一次覆工を構成する)RCセグメントに腐蝕が認められ、現場付近の下水道管は腐食により、二次覆工がほぼ欠損し、一次覆工もコンクリートの表面が剥落。継ぎ手部分の露出・破損・脱落が確認された。
「下水道管が化学的腐食を受けて劣化していたことは、回収したRCセグメントや下流部の下水道管内部の状態から間違いない」「一次覆工の裏込め注入孔の隙間、シール材の劣化や継ぎ手部・RCセグメント本体の損傷によって生じた隙間が現地で確認されたため、(土砂が流入する)小規模な隙間があった可能性は十分に考えられる」などと指摘した。
同委員会は今後、残存物の回収や試験などの結果を基にしたさらなる検証と、同様の事故発生を防止するための留意点について、事象の検知検出、点検・調査、対策に関する視点からの検討を予定している。藤野委員長は会見で「陥没シナリオのさらなる検証を行うとともに、問題箇所の修繕方法なども検討を行う」と述べた。
■安全確保に努めたい/大野知事の話
原因究明委員会の中間取りまとめにおいて、「今回の道路陥没は、県が管理する中川流域下水道の硫化水素によって腐食した下水道管に起因するものと考えられる」と結論づけられたことを受け、大規模な下水道管の点検・調査方法の抜本的見直しや対策方法の確立の必要性など、今回の事故で浮き彫りになった課題について、引き続き、国に対しても積極的な取り組みを求めるとともに、下水道の管理者として下水道施設の安全確保に努めてまいりたい。










