野球通じ人間形成 開智高校・篠崎監督 生徒支え続けた41年間 進学校の野球部支え、東大現役合格者も輩出 「文武両道」の精神を体現 「選手たちの成長を見るのが楽しかった」
16日にレジスタ大宮球場で行われた全国高校野球選手権埼玉大会3回戦の開智―川越。開智は2―5で敗退し、同校の篠崎優監督(68)が41年間の指導生活に幕を下ろした。進学校の野球部を長年にわたり支え続け、東大現役合格者も輩出するなど「文武両道」の精神を体現。「寂しいけれど、最後までやり切った。選手たちの成長を見るのが楽しかった」と穏やかに会場を後にした。
篠崎監督は神奈川県出身。日大高(神奈川)では内野手として活躍した。高校3年の夏は神奈川大会の準決勝で、元プロ野球・巨人の原辰徳さんを擁する東海大相模と対戦。注目の4番打者に対し4打席連続敬遠でスタンドからやじが飛んだのは、今も鮮明に記憶に残る。大学2年次に母校のコーチを務め、指導者として歩み始めた。
大学卒業後は日大鶴ケ丘高(東京)の野球部監督に就任。1984年に埼玉第一高校(現開智高)の監督に就いた。創部2年目の当時は、野球部員20人弱。「部員もいないので、力のないところから徐々に育てていった」と歩みを語る。一時は100人を超える大所帯にまで発展した。
99年の校名変更を機に、学校は学業重視の方針を強めた。野球部は月、木、日曜日の部活動がなく、練習時間は限られる。火、水、金、土曜日は授業後2時間程度。部員数も減り、2014年の秋季大会には出場できなかった。「部員がいないと練習もできない。全くの野球初心者も多いので、平等に練習することを心がけた」と生徒の状況に合わせた指導法を築いていった。
篠崎監督が率いた夏の最高成績は98年の東埼玉大会16強。決して突出した結果を残すことはなかった。しかし、篠崎監督の指導は実を結ぶ。2019年、当時主将の松島司樹さんが野球部で初めて現役で東京大学に合格。21年には、元マネジャーの藤田南さんが創部120年を超える伝統のある早稲田大野球部で初の女子マネジャーとなった。
野球を通じて人間的な成長を促す指導は、多くの教え子の心に深く刻まれている。この日、監督の雄姿を目に焼き付けようと、スタンドには多くの卒業生が駆け付けた。大学4年の吉田瑛紀元主将(21)は「ここまでよく野球部で頑張ってくれました。礼儀や生活態度で教わったことは多い。勉強と野球、バランスよくできたことは今にも生きている」と感謝を述べた。
次期監督は同部顧問の田渕康暉さん(30)が務める。長年、監督と責任教師を一人で兼任してきたが、ついにバトンを渡す日が来た。「弱いけどたくさんの卒業生がいる。母校を守ろうと今まで頑張った」と篠崎監督。絶やすことなく紡いだ開智高野球部の41年間の歴史。監督の教えを胸に、教え子たちはこれからも、それぞれの舞台で羽ばたいていく。










