埼玉新聞

 

<高校野球>甲子園出場 光と影 笑顔の夏へ再構築/浦和実 高校野球埼玉大会へ燃える実力校【4】

  • 夏本番に向けて投球練習に励む石戸(手前)ら浦和実の投手陣=6月6日、さいたま市緑区の九里学園大崎総合運動場

    夏本番に向けて投球練習に励む石戸(手前)ら浦和実の投手陣=6月6日、さいたま市緑区の九里学園大崎総合運動場

  • 夏本番に向けて投球練習に励む石戸(手前)ら浦和実の投手陣=6月6日、さいたま市緑区の九里学園大崎総合運動場

 春の甲子園を沸かせた熱狂を再び夏に―。第107回全国高校野球選手権埼玉大会が7月9日に開幕する。今春の選抜大会は甲子園初出場の浦和実が堂々の4強入りと躍進を遂げた。その鮮烈な記憶が再び呼び覚まされるか。それとも、新たな主役が頂に上り詰めるか。春夏連続甲子園を狙う浦和実と、夏の甲子園初出場で旋風を巻き起こそうと燃える実力校を4回にわたり紹介する。

 大会まで約1カ月に迫った6月6日、ベンチ入りメンバーの選手間投票を行った後、選手たちはグラウンドに姿を現した。今春の選抜大会で初出場4強と躍進した浦和実。快進撃で脚光を浴びた一方で、選手たちは甲子園出場に潜む“影”にもがき苦しんでいた。

 大舞台で存在感を放ち、満を持して臨んだ春季県大会。Aシード校は4月26日の聖望学園との初戦で敗退した。エース石戸颯汰をコンディション不良で欠き、打線は5安打に封じられた。輝かしい実績から一転、投打で課題を突き付けられた。

 春季県大会前の練習で主将の小野蓮は危機感を募らせていた。練習の準備や片付けを人任せにして緊張感を欠き、あいさつのない私生活。攻守にわたり緩慢な動きが現れた。小野は「全国4強という結果に満足感があった。おごりが出た」と振り返った。

 「何かを変えなければここで終わってしまう」。敗戦から2日後、小野は主将の辞任を申し出た。約2時間の話し合いの末、野本大智捕手は「ここまで来たのは主将のおかげ。最後まで続けてほしい」と全員一致で小野の主将続投が決定。再びチームが一つとなった。

 エース石戸は春季県大会の約2週間後から実戦復帰。休養期間は映像研究に打ち込み、最速は3キロ上がり133キロを計測した。「甲子園を経験して、確かな自信がついた。切磋琢磨(せっさたくま)して夏の急成長を遂げたい」と投手陣は態勢が整いそうだ。

 一方、解決しない課題もある。練習の雰囲気は「悪くはない」(野本)のが現状。ただ「選抜の雰囲気を超える感覚はない。夏への逆算がうまくいかずに来てしまった」と小野。責任感の強い主将だからこそ、チームを見る目は誰よりも厳しい。

 春の県大会敗戦から練習で変えたところはない。昨秋の県大会を制し、選抜大会で4強入りした力は本物だ。小野は「あとは意識の問題。夏までの残り期間でどこまで戻るか」と集大成を見据えた。

 夏の最高成績は2008年の南埼玉4強。記念大会を除くと6度のベスト8が記録となる。初の夏の甲子園に向けてノーシードから出発する。辻川正彦監督(60)は「春の負けがかえって良かったと思えるように。(この代が)甲子園で終われたら最高だ」と笑顔の中に覚悟がにじんだ。深い影を抜けた先に、再びまばゆい光が待っている。

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