埼玉新聞

 

<高校野球>ゼロからの集大成 「考える野球」追求/叡明 高校野球埼玉大会へ燃える実力校【1】

  • 真剣な練習中にも笑顔を絶やさない叡明の選手たち=6月16日、叡明高校

    真剣な練習中にも笑顔を絶やさない叡明の選手たち=6月16日、叡明高校

  • 真剣な練習中にも笑顔を絶やさない叡明の選手たち=6月16日、叡明高校

 春の甲子園を沸かせた熱狂を再び夏に―。第107回全国高校野球選手権埼玉大会が7月9日に開幕する。今春の選抜大会は甲子園初出場の浦和実が堂々の4強入りと躍進を遂げた。その鮮烈な記憶が再び呼び覚まされるか。それとも、新たな主役が頂に上り詰めるか。春夏連続甲子園を狙う浦和実と、夏の甲子園初出場で旋風を巻き起こそうと燃える実力校を4回にわたり紹介する。

 買い物客でにぎわう越谷レイクタウンから少し離れた場所にある叡明高校。2015年に移転した新しい学び舎(や)には、広大なグラウンドが併設された。気温が30度を超えた6月中旬、春に飛躍を遂げた野球部は活気に満ちた練習を行っていた。

 春季県大会で準優勝し、初の関東大会に出場。初戦で選抜大会16強の山梨学院と接戦を演じ、手応えと課題を持ち帰った。根本和真主将は「チームはまだ成長途上で、大きく変わろうとしている。もう一回り成長したい」と向上心は尽きない。

 グラウンドの一角には中村要監督(51)が大切にする言葉が掲げられている。「物事の本質を捉えよ」。就任6年目の中村監督は17年まで7年間、浦和学院で打撃コーチを務めた。考える野球を信条とし、練習から試行錯誤を繰り返す。

 指揮官が結果に一喜一憂することはない。失敗にも叱責(しっせき)はせず、重視するのは成功に至るまでのプロセスだ。“結果オーライ”は許さない。根本は「3割で成功とされる競技。本番で結果を出すために練習から追求する」と選手たちは監督の野球哲学を理解する。

 飛躍のきっかけは3月に行った7日間の関西遠征だった。強豪との練習試合を重ね、遠征5日目に選抜大会の準々決勝・浦和実―聖光学院(福島)戦を観戦。堅守から勢いづく野球で4強入りした浦和実を前に、選手たちの目の色が変わった。

 試合後はチームで意見がまとまった。「派手さはなく、自分たちに似た堅実なタイプ。叡明が勝る部分もあり、甲子園でプレーしたいと思った」と田口遼平遊撃手。羨望(せんぼう)のまなざしで見た光景は、春季大会を経て現実的な目標となった。

 昨夏のベンチ入り選手は田口、根本、笘大悟の3人のみ。現チーム発足直後は新人戦で春日部共栄にコールド負けを喫した。しかし、田口は「秋のチームとは全く別。いい野球ができそう」と自信を口にした。ゼロからの歩みが、集大成の夏に結実しようとしている。

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