埼玉新聞

 

元駅伝選手、新たな挑戦 新井康平さん、出身地の上尾でコーヒー店経営 箱根、ニューイヤーにも出場 度重なるけがの影響で4年前に現役引退、今年4月にもう一つの夢へスタート

  • 「マラソンに例えるならようやくスタートライン。地域で長く愛される店にしたい」と話す新井康平さん=5月29日、上尾市上町

    「マラソンに例えるならようやくスタートライン。地域で長く愛される店にしたい」と話す新井康平さん=5月29日、上尾市上町

  • 「マラソンに例えるならようやくスタートライン。地域で長く愛される店にしたい」と話す新井康平さん=5月29日、上尾市上町

 JR上尾駅東口から徒歩3分の路地裏にある本格自家焙煎(ばいせん)のコーヒー店「THE GOAT COFFEE(ザ・ゴートコーヒー)」。英国のテーラー(紳士服の仕立て屋)を思わせるスタイリッシュな店内には心地よいジャズナンバーが流れる。オーナーの新井康平さん(28)=上尾市出身=は箱根駅伝(東京箱根間往復大学駅伝競走)やニューイヤー駅伝(全日本実業団対抗駅伝競走)にも出場した元長距離ランナー。度重なるけがの影響で4年前に現役引退を余儀なくされたが、今年4月にもう一つの夢だったカフェ経営のスタートを切った。

■元アスリート

 新井さんは2015年春、浦和実業学園高校から大東文化大学に進学。監督・チームメートからの信頼も厚く箱根駅伝には1年から出場。通算3回のレースは全て1区(21・3キロ)を任された。それでも「周囲には迷惑ばかりかけた」と苦い記憶が脳裏に焼き付く。2年時には左脚を疲労骨折し、ほぼ1年間のリハビリ生活。4年時の第95回大会はスタート序盤で他チームの選手と接触するアクシデントに見舞われ転倒。負傷した左脚を引きずりながら力走したが、区間22位に沈んだ。

 大学卒業後はサンベルクス(東京)に入社。2年間の実業団生活を送ったが、過去のけがの影響で本来の走りは戻らず、アスリートの夢を断念。別の目標だった喫茶店オーナーになろうと24歳で引退した。

■セカンドキャリア

 「競技人生に悔いがないと言ったらうそになる」。それでも寮生活をしていた大学時代に好んで入れていたコーヒーを極めようと、引退後は実家の内装業を手伝いながら各地の喫茶店を巡り研究した。そんな中、師と仰ぐさいたま市内の人気店「アリーコーヒー」の阿部さん夫妻に出会い、修業を懇願。約3年間の下積みを経て今回の起業へとつながった。初めての経営に不安もあったが、一歩踏み出せたのは妻雪菜さんの「いいね」の一言。「優しく背中を押してくれた」と感謝する。

 上尾市内の駅近に2階建てのかわいらしい物件を見つけた。通りの雰囲気もいい。金融機関の支援を受け、内装は父真吾さん(65)が協力、空調工事は知人に依頼し節約できる部分は極力自分たちで仕上げた。

■店名に込めた思い

 店名の「GOAT」はスポーツ界の俗語で「Greatest Of All Time(史上最高)」の略。「誰かにとって最高のコーヒーを出す店になりたい」との思いを込めた。

 新井さんは「陸上競技のおかげで日々の努力や計画的な準備の大切さを学んだ。お客さまがくつろげるゆったりとした空間にしていきたい」と笑顔を浮かべる。

 高品質のスペシャリティコーヒーにこだわり、自身がおいしいと感じた豆のみを提供。さまざまな好みやシーンに合うものを厳選した。自家製のドーナツやフレンチトーストなどスイーツもそろえている。

【メモ】所在地は上尾市上町1の2の26。営業時間は午前8時~午後6時。水曜定休。駐車場なし。店舗情報は写真共有アプリ「インスタグラム」へ。

ツイート シェア シェア