多選批判との戦い制す 自戒込め「原点回帰」/さいたま市長選・戦いを終えて(上)
清水氏が5選を果たしたさいたま市長選を振り返る。
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5月8日、大宮区で開かれ総決起集会に清水勇人氏はプロレスラー・アントニオ猪木のテーマ「炎のファイター」で登場した。県議時代の集会などで使っていた曲で「原点回帰が今回のテーマ。市長の職は責任があり権力もある。自分の原点は何かを問いかけながら職務に当たらないと、長くやることが慣れになったり、間違った方向に行ってしまう」。16年前は当時の現職を多選批判して市長に初当選した経緯があるだけに、5期目に挑む自らに言い聞かせる意味もあったのだろう。
今回の市長選で争った新人たちは多選批判を口にした。約9万7千票を獲得し次点だった沢田良氏は、自らの任期を「2期8年」と公約に掲げ、「5期20年は長すぎる」と真っ向から批判。告示前の立候補予定者のネット公開討論会に清水氏が出席できなかったことを、街頭や動画で「逃げている」と訴えた。
多選批判に対して、清水氏が取ったのは「徹底した現場主義」。公務をこなしながら時間の許す限り、市内10区に足を運び、マイクを握った。「市民一人一人の顔を見て、声を聞き、反応を見ることで実感が得られる」と、4期16年の成果、今後の課題などを地域の実情に合わせ熱く訴えた。交流サイト(SNS)にはメッセージを投稿し、見てもらいやすい短い動画を頻繁に上げた。睡眠が3時間になることもあったという。
清水氏の市長選を毎回、手伝っているという陣営関係者は「もっと多選批判が多いかと思っていたが意外と評価してくれている印象。わざわざ戻って握手してくれる人も多く、今までの5回の中で一番反応が良かった」と誇った。
危なげなく5選を果たしたが、ただ、陣営が手応えを示すほど、これまでのような圧勝ではなかった。得票率は45・61%にとどまり、新人4氏の得票数の合計は過半数を占めた。
公開討論会の欠席について、清水氏は27日の就任会見で主催者から日程提示された時点ですでに予定が入っていたとし、「出られなかったことは大変残念だった」と説明。批判票については「これまでの取り組みを好意的に評価していない市民も一定数いるので、その点も含めて市政運営に生かす」と述べた。
選挙運動期間中、清水氏を友情支援してきた市議の一人は「多選批判のもとになっている市役所の雰囲気の停滞感があるのは事実。市民本位の市政運営ができているのか、しっかりとチェックしていきたい」と強調した。










