埼玉新聞

 

地域とともに歩む川口・小谷場中が文科大臣表彰 歴代校長、地域の学校応援団、PTAの協働精神が光る

  • 市役所を訪れた小谷場中代表者ら。前列に生徒会代表。後列は左から浦辺敏夫さん、坂井知子校長、奥ノ木信夫市長、茂呂修平教育長、天野剛行さんら=8日、川口市

 「地域とともに歩む学校」を実現しているとして、川口市小谷場の市立小谷場中学校(坂井知子校長、生徒数234人)が本年度の文部科学大臣表彰を受けた。歴代の校長と、PTAや学校応援団など地域住民による協働精神が受け継がれた成果といえる。

 地域パワーで学校を盛り立てようというDNAが脈々と生きている。

■紫陽花の森

 同校では開校30周年の記念事業として、2007年に東側斜面にアジサイを植え「紫陽花の森」とした。森泉明校長(当時)が市立グリーンセンターのアジサイの剪定(せんてい)作業で出る枝を無料で譲り受け、挿し木で苗を育てることを思い付いた。

 校長のアイデアに地元の小谷場町会が協力した。川口市農協組合長(当時)の浦辺敏夫さんのほか、川口信用金庫支店長=同=の小沢靖之さん、工務店社長の佐久間雄治さんら、地域の応援団が生徒たちに協力し、泉を保全したビオトープとともに「紫陽花の森」が実現した。

■祭りの創造と復活

 その後、校長は赤川富男さんから、現在の坂井さん(58)に。17年11月には、40周年記念事業として、全校生徒たちが校内の枝から接木で育てたアジサイの苗木300本を新たに植栽し、森は年々豊かになっている。

 アジサイが咲く毎年6月、校庭を会場にPTAや地域応援団が模擬店を出し「紫陽花祭り」を開催している。

 一方、かつては同校の校庭で開催されていた上谷町会の盆踊り大会は東日本大震災以降、中断していた。

 「再開しましょう」と同校生徒たちが同町会の若林恒郎会長らに提案し、赤川校長だった15年夏に同校校庭を会場に「納涼祭」として復活させた。これに小谷場町会も協力した。それからは生徒会主催事業として、毎年8月上旬に続いている。

■学習支援

 同校では月に2回、7時間目の補習授業として「ステップアップ学習会」を開いている。生徒たちは数学など5教科のうち希望の教科を一つ選び、少人数のクラスで学ぶ。同校の教師のほか、学校応援団から数学で2人がボランティアで教えている。

 芝南公民館で活動している料理研究会の女性たちは調理実習に来てくれる。

 生徒数の減少に伴い一時は統廃合で学校がなくなる危機感を、学校関係者が感じたこともあった。15年ごろの生徒数は127人。今は234人に増加した。

 坂井校長は「毎年、新1年生の入学が増えている。静かな環境、補習もしっかりやってくれるという地域の好感を得ていることが背景だと思う。これも地域の皆さまのおかげ。地域に開かれた学校、地域とともに歩むということの大切さを実感している」と語る。

 坂井校長と生徒会長の2年山田瑚奈さん、同副会長の2年田中浩暉さん、前生徒会長の3年吉田光佑さん、PTA会長の天野剛行さん(48)、地域応援団代表として地元小谷場町会長の浦辺敏夫さん(69)らが8日、市役所に奥ノ木信夫市長を表敬訪問し、表彰を報告した。

 市長は「皆さんの元気が川口の街の元気につながる。これからもよろしく」と激励。最近活躍が目立つ同中ダンス部の部長でもある山田さんは「これからも地域の皆さんとの交流に、生徒会全員で頑張っていきたい」と話した。

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