埼玉新聞

 

秩父の木から地産地消 秩父ミューズパークにあるシュガーハウス 「素材の確保とやり方は時代に合わせ、変えていかないといけない」と危機感 メープルベース代表、井原愛子さん/全国植樹祭 森の守りびと(3)

  • メープルベースの前で植樹したカエデを見守る代表の井原愛子さん=4月20日、秩父ミューズパーク

    メープルベースの前で植樹したカエデを見守る代表の井原愛子さん=4月20日、秩父ミューズパーク

  • メープルベースの前で植樹したカエデを見守る代表の井原愛子さん=4月20日、秩父ミューズパーク

 秩父市と小鹿野町にある秩父ミューズパークを主会場に25日に開かれる「第75回全国植樹祭」。66年ぶりの県内開催を前に、県内で森林の保全や育成に取り組む人々を紹介する。

■人生変えたカエデ樹液

 25日に「第75回全国植樹祭」が開催される秩父ミューズパーク内にシュガーハウス「メープルベース」がある。メープルシロップブランドの拠点で、シュガーハウスはメープルシロップを製造する工場や小屋を意味する。併設されたカフェはメープルシロップを使った飲食物を提供し、幅広い世代から人気を集めている。オープンから10年目を迎え、代表の井原愛子さん(43)は「本当に多くの皆さんに支えられて、ここまで何とかやってこられた」と語る。

 井原さんは秩父市出身。大学卒業後、スウェーデンの家具販売会社に勤務した。秩父で自生するカエデの木から樹液を採取し、樹液を煮込んで作るメープルシロップを使った商品作りが行われていることを知り、2013年にカエデの森の森林観察会に参加したことを機に退社。16年に秩父市と小鹿野町にまたがる秩父ミューズパーク内にメープルベースをプロデュースした。

 一度は秩父を離れて生活していたが、生まれ育った故郷での取り組みをテレビで知り、心を大きく動かされ、人生を変える転機となった。周囲の反対も押し切って退社し、森林と向き合っていった。「若い時は勢いで突っ走っていた」と苦笑いで振り返る。メープルベースにはメープルシロップの本場であるカナダから輸入したエバポレーター(蒸発機)が設置され、樹液を煮込んでメープルシロップを製造している。

 樹液は冬に採取しているが、昨年は暖冬の影響で不作だった。樹液採取の終了時期も早まっていて、温暖化の影響を実感している。以前は樹液採取が可能だった秩父地域の各地で採取したが、現在は効率も考慮して、小鹿野町の両神地域の小森川沿いを中心に実施している。「素材の確保とやり方は時代に合わせ、変えていかないといけない」と危機感を持っている。

 カエデ樹液の採取現場などを見学し、カエデ樹液のシロップを満喫するエコツアーは新型コロナウイルスの影響で中断していたが、今年から復活させた。最近は秩父地域の小中学校で出前授業も行うなどして、裾野を広げる活動も積極的に展開している。

 かつてに比べれば効率的に樹液採取やメープルシロップの製造ができるようになったが、スタッフも高齢化し、持続可能な取り組みとするためには、後継者の育成も必要だと考えている。「いい活動をしていても食べていけなかったら、それで終わってしまう。自然環境への関心も高まってきているので、これからは若い後継者も育てていきたい」

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