埼玉新聞

 

八潮の道路陥没、不明男性を搬送 救出に3カ月、付近住民ら安堵するも、周辺に鼻を突く臭い漂う…生活への影響を懸念する声「県や市は住民のサポートを」「インフラの老朽化、人ごとでない」「復旧まで遠回りを」

  • 消防隊員らに囲まれ草加署に向かう遺体を乗せた車両

    消防隊員らに囲まれ草加署に向かう遺体を乗せた車両=2日午前8時5分過ぎ、八潮市二丁目

  • 【地図】八潮市(2025陥没現場入り)

    道路が陥没した八潮市の位置

  • 消防隊員らに囲まれ草加署に向かう遺体を乗せた車両
  • 【地図】八潮市(2025陥没現場入り)

 八潮市で県道が陥没してトラックが転落した事故から3カ月以上がたった2日、地中の下水道管内で不明となっていた70代の男性運転手とみられる遺体が発見され、草加署に搬送された。男性はその場で死亡が確認された。陥没箇所の復旧にはまだ時間がかかる見通しで、下水道管が通っている影響か、周辺には鼻を突くような臭いが漂っており、生活への影響を懸念する声も上がった。

 救出活動は、下水道管への影響が少ないとされる午前4時半ごろから始まった。県警や消防隊員は前日と同じく防護服を着て、ボンベを背負い、ゴーグル、マスクなどを着用。下水道管内に向かった。

 作業は全体を囲うテントのような大型の建屋の中で行われた。午前7時50分ごろ、県は警察、消防からの報告を受け、運転手とみられる人物を救助したと発表。その場で死亡が確認されたという。

 同8時5分過ぎ、建屋のカーテンが開き、遺体を乗せた車両が現れた。大勢の隊員が目隠しで車両を覆い、車両は報道陣の前を過ぎ草加署に向かった。

 現場近くで働く70代男性は、1月28日に事故が発生する5時間前に現場の交差点を車で通っており、「事故を知ったときは怖かった。まさかここまで大きくなるとは」と驚いた様子だった。「(運転手が)見つかって良かった。復旧までは時間がかかり、遠回りをしなくては」と苦慮していた。

 交差点の近くの製造業会社で働く男性(52)は事故からの3カ月を「臭いや揺れもあり、交通の流れも変わった」と振り返った。一方で、運転手救助が優先で補償が後回しになっていたとし、「住民が運転手の救出を待ち望んでいたのは事実だが、住民説明会でも補償などの今後の話がなかった」と指摘。「運転手が救出されたことでこれからのことが考えられるようになる。県や市は住民をサポートしていただきたい」と求めていた。

 市内に住む80代女性は「冷たい所で長い間、気の毒だった。やっと(地上に)上がってこられて良かった」と事故現場に向かい手を合わせた。

 八潮市の大山忍市長は「心から哀悼の意を表しご冥福をお祈り申し上げる。ご家族、会社の皆さまに謹んでお悔やみ申し上げる。本件の事故に際し支援、協力いただいた皆さまに感謝するとともに、今後一日も早い復旧・復興に向け、取り組んでいく」とコメントした。

■下水使用制限の住民、解除後も安否を心配

 八潮市の県道陥没事故では、救出活動の妨げとなる下水道の水量を抑制するため、流域の12市町約120万人を対象に約2週間、下水道の使用制限が行われた。該当した自治体の住民は使用制限の解除後も転落したトラック運転手の安否を心配し、発生から約3カ月かかった救出に複雑な心境を明かした。

 春日部市の50代パート女性は下水道の使用制限中、洗濯の回数を減らしたり、入浴をシャワーで済ませるなど節水に努めた。「救出されるまで協力しようと考えていた。運転手が家族の元に戻れて良かった」と胸をなで下ろしつつ、「こんなに時間がかかるとは思わなかった。難しい状況だったが、できれば生きているうちに救出してほしかった」と話した。

 幸手市の団体職員男性(47)も「使用制限が終わった後も、運転手の安否はずっと気になっていた」という。事故の影響が広範囲に及んだことに触れ、「インフラの老朽化が原因で、人ごとではないと感じた。ハザードマップのような形で危険な場所を知らせてほしい」と求めた。

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