埼玉新聞

 

母親から好評!産後の不安や悩みに寄り添う「旅館で産後ケア」 深谷の老舗旅館と助産院が協業、今年1月から開始 ママは自分のための投資も必要「家族が後押しして」

  • 産後ケアサービスを利用した福島加奈子さん(中央)の長男晃輔ちゃんを抱く助産師の高橋幾恵さん(左)と女将の原田友子さん

    産後ケアサービスを利用した福島加奈子さん(中央)の長男晃輔ちゃんを抱く助産師の高橋幾恵さん(左)と女将の原田友子さん=15日午後、深谷市本住町の旅館きん藤

  • 産後ケアサービスを利用した福島加奈子さん(中央)の長男晃輔ちゃんを抱く助産師の高橋幾恵さん(左)と女将の原田友子さん

 深谷市の旅館きん藤とのんりく助産院は今年1月から「旅館で産後ケア」(産後ケアデイサービス)を開始した。旅館ならではの風呂や部屋でゆっくり過ごせるほか、一人一人の産後の不安や悩みに寄り添い、15種類以上の豊富なメニューから希望のプランが組めるオーダーメードスタイルが特徴。利用した母親たちからは好評を集めている。

■ほぐす体と心

 「本当にぐっすり寝ているね」。今月15日、深谷市本住町の旅館きん藤。上里町在住の福島加奈子さん(31)が旅館で産後ケアのサービスを受け、のんりく助産院代表の助産師高橋幾恵さん(49)、旅館の女将(おかみ)原田友子さん(54)と談笑していた。

 福島さんは生後2カ月半の長男晃輔ちゃんを預け、マッサージを受けたり、ゆっくり入浴したりして、約2時間の昼寝もしたという。「赤ちゃんと離れたことがなかったので、気が楽になった。体もかなり回復したし、また利用したい」と笑顔だった。町からは補助金も出ていて、通常料金よりも安く利用できた。

 選べるケアメニューは「育児・授乳相談」「乳房ケア」「赤ちゃんを預けてリラックス」「旅館のお風呂でゆったり温浴」「ベビーマッサージ・ベビービクス体験」「助産師による産後ケアマッサージ」「骨盤底筋ストレッチ」など。日帰りプランは税込み2万5300円、宿泊プランは同3万3千円になっている。

■利用増も課題

 産後ケアは出産後1年以内の母子に対し、心身のケアや育児のサポートを行うもの。2019年の母子保健法改正で産後ケア事業が法制化され、21年度に市町村の努力義務となった。制度の充実によって利用者数も増加している。

 国を挙げて取り組む子育て支援策の一つだが、産後ケアの施設不足や利用者の利用条件で産後ケアを受けられないケースもある。産後ケアを必要とする人により広く活用してもらおうと、旅館で産後ケアに取り組むことになった。

■時間を提供

 旅館で産後ケアはブランディング会社タイガアソシエイツ(名古屋市)が展開する産後ケア事業の一環で、創業200年の老舗旅館と深谷を拠点に訪問型産後ケアで実績のある助産院が協業。助産院は旅館の設備を活用することで日帰り型の産後ケアサービスの提供が可能になり、旅館も日中の空きスペースを活用することで新たな収益源や顧客層の獲得を期待できる。

 高橋さんは「ママは子どもを託すことに抵抗を持つけど、時には自分のための投資も必要で、家族が後押ししてほしい」と語る。原田さんも「今の時代の子育ては本当に大変なので、お母さんたちにゆっくり過ごす時間をプレゼントしてほしい。補助金を出す自治体も少ないので、これから広がっていけば」と話した。

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 詳細は、のんりく助産院ホームページ(HP)か交流サイト(SNS)へ。

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