娘が刺される…2歳で全治2カ月、哀れに思って刺すのをやめた母に執行猶予5年 義母、夫、娘と4人暮らし 義母がいつも叱責、夫は暴力「茶わんを投げていた」…今後は実母が支援、裁判長が同情「暖かい春を祈る」
2023年8月、さいたま市見沼区の自宅で長女=当時(2)=の首や胸を刃物で刺して殺害しようとしたとして、殺人未遂の罪に問われた、同市の会社員女(33)の裁判員裁判(室橋雅仁裁判長)の判決公判が7日、さいたま地裁で開かれた。室橋裁判長は被告に懲役3年、執行猶予5年(求刑・懲役5年)を言い渡した。
判決理由で室橋裁判長は、「全く落ち度がない弱い存在の被害者を殺害しようとしたことは許されるものではない」と指摘。同居していた夫と義母からの暴力や叱責(しっせき)で指示に従わなければならない状況だった。夫らの発言から自殺することや両親を殺害して刑務所に行くことを考えたが実行できず、娘でも刑務所に行けると考えて犯行に及んだとした。
一方で、周囲に相談できる状況ではなく犯行時は適応障害の状態で、経緯や背景事情には同情できる面があるとし、後悔と反省を述べていることや証人として出廷した実母が被告と同居して更生支援すると話していることなどから、「社会内での立ち直りの機会を与えるのが相当」として執行猶予付き判決とした。
判決理由を述べた後、室橋裁判長は「あなた自身の心のケアにも目を向けていただきたい。外は暖かく、もうすぐ春になる。これからのあなたの人生にも暖かい春が訪れることを祈っている」と説諭した。
判決によると、被告は23年8月12日、さいたま市見沼区の自宅で長女の胸部と頸部(けいぶ)を包丁で突き刺して殺害しようとしたとされる。長女は全治2カ月の心膜損傷などの傷害を負った。
■「殴られ罵倒され、自分が無価値だと思った」(以下、初公判時の記事)
2023年8月、さいたま市見沼区内の自宅で、娘の首や胸を刃物で刺して殺害しようとしたとして、殺人未遂の罪に問われた、同市の会社員女(33)の裁判員裁判の初公判が2月20日、さいたま地裁(室橋雅仁裁判長)で開かれた。被告は「間違いはない」と起訴内容を認めた一方で、「首を突き刺したというのが適切か分からない」とした。
被害者の氏名や住所特定の恐れがあるため、裁判は被告人名を明かさず行われた。冒頭陳述などで検察側は、被告が2世帯住宅で義母と夫、娘の4人暮らしだったとして、義母からは頻繁に叱責(しっせき)を受け、夫からは暴力や暴言を受けていたと説明。犯行の最中で娘を哀れに思い、中止したとした。
弁護側は動機について、義母から理不尽な非難を浴びて、茶わんを投げ付けられたり、土下座を強要されたことや、夫からも顔面を殴られたり罵倒され、自分が無価値だと思うようになったと指摘。自殺を試みたが失敗し、娘を殺せば刑務所に入ることができると思い立ち、犯行に及んだとした。
起訴状などによると、23年8月12日、自宅で長女=当時(2)=の胸部を包丁で1回突き刺し、頸部(けいぶ)を複数回突き刺して殺害しようとしたとされる。長女は全治2カ月の心膜損傷などの傷害を負った。
■浴室から子どもの泣き声(以下、逮捕送検時の記事)
娘を刃物で刺して殺害しようとしたとして、埼玉県警大宮東署は2023年8月14日までに、殺人未遂の疑いで、さいたま市見沼区、会社員の女(31)を現行犯逮捕し、さいたま地検に送検した。
逮捕、送検容疑は12日午後1時8分ごろ、居宅内で長女(2)の胸など上半身を包丁で刺すなどして殺害しようとした疑い。長女は病院に搬送されたが、命に別条はないという。
同署によると、女は長女、夫、義母との4人暮らし。浴室から子どもの泣き声が聞こえたため、別の部屋で寝ていた夫(38)が駆け付けたところ、女と血を流した長女を発見。夫が「妻が子どもを包丁で刺した」と通報した。
女は「子どもを刺したことは間違いない」と容疑を認め、「夫や義母、自分の両親との関係に悩んでいた」と供述しているという。
これまでに警察に虐待などに関する通報や相談はなかったという。同署で動機や経緯などについて詳しく調べる。
■午後1時過ぎの自宅で悲劇(以下、初報記事)
刃物で娘を刺して殺害しようとしたとして、埼玉県警大宮東署は2023年8月12日、殺人未遂容疑でさいたま市見沼区、会社員の母親(31)を現行犯逮捕した。
県警によると、母親は同日午後1時8分ごろ、自宅で長女(2)の上半身を刃物で刺すなどして殺害しようとし、全治不詳の傷害を与えた疑いが持たれている。長女は病院に搬送されたが、命に別状はないという。