埼玉新聞

 

中銀カプセルタワービル解体中、じつは北浦和公園に同じカプセルが 再び注目 窓から室内を見ると

  • 北浦和公園彫刻広場に常設展示されている住宅カプセル=さいたま市浦和区常盤9丁目

 日本を代表する建築家黒川紀章さん(1934~2007年)の傑作として知られる集合住宅「中銀カプセルタワービル」(東京・銀座)の解体工事が進められている。四角い形に大きな丸い窓の近未来的な構造物で、多くの人を半世紀にわたり魅了してきた。同じ住宅カプセルが10年前から、さいたま市浦和区の北浦和公園彫刻広場に常設展示されており、解体工事を機に改めて注目されている。

 同ビルは住宅カプセル計140個が組み合わさっている構造で、建築思想「メタボリズム(新陳代謝)」を象徴する建物。メタボリズムは生物学用語で、建築や都市計画も生命が成長するように、造形モデルを展開すべきというもので、黒川さんらが1960年代に提唱した。72年の建築から半世紀が経過して老朽化が進むなどしたため、4月12日から解体工事が始まった。

 県立近代美術館によると、北浦和公園の住宅カプセルは2011年9月~12年1月、東京・六本木の森美術館で開催された「メタボリズムの未来都市展」で展示された作品。黒川さんが設計した最初の美術館が近美という縁で寄贈が決まり、展覧会が終了した翌日の1月16日に搬送された。

 住宅カプセルは高さ268センチ、幅418センチ、奥行き278センチの四角い構造物。カプセル内には入れないが、直径130センチの丸型の窓から、室内のベッドやテレビ、電話、ユニットバスなどを見ることができる。同ビルの解体により、一部の住宅カプセルは美術館などへの寄贈が検討されるなど注目が高まっている。

 近美の担当者は「50年を経過していても新しさを感じる。美術館に寄った際には、併せて見ていただきたい。内装や機器は全て当時のままなので、ぜひ窓から室内を見てほしい」と話していた。

 「中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクト」代表の前田達之さんが8日、近美2階講堂と公園内で講演する。住宅カプセルを複数所有する前田さんが、暮らしていた体験などを語る。近美フレンド(友の会)会員限定。

 問い合わせは、同館(電話048・824・0111)へ。

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