サケの遡上、初のゼロに 埼玉・行田の利根大堰 気候変動影響か 最多は2013年の1万8千匹超も近年は急激に減少
利根川中流の行田市と群馬県千代田町にまたがる利根大堰(ぜき)を遡上(そじょう)するサケの数が、今季は1983年の調査開始以来、初めてゼロとなったことが6日までに分かった。近年は急激な減少が続き、気候変動の影響が指摘されている。
調査は、利根大堰を管理する水資源機構利根導水総合管理所が毎年10月1日~12月25日に行っている。方法が変遷したため単純な比較はできないが、2021年以降は3本ある魚道に定点カメラを設置。午前8時~午後5時に写った魚影を数えるほか、暗くて撮影できない夜は、センサーで毎日24時間自動計測していた18年までの実績から推定した数を加え、翌年2月ごろ確定値を発表してきた。
今シーズンは映像分析の委託先からの報告が6日までにあり、期間中に撮影された魚影が初めて「0匹」となった。このため、夜間の推定値も「0」になる見通しだ。
管理所は、魚影が撮影された速報値をホームページで随時更新しているほか、行田市側の1号魚道にある大堰自然の観察室を毎日昼間に開放。魚道の中を観察し、利根川の自然と触れ合えるようにしている。調査期間の終了が迫った昨年12月23日にも、見学者が来場。今季はサケの遡上が確認されていないことを知ると、群馬県太田市から訪れた保育士の50代女性は「見られなくてがっかり。なぜ来なくなってしまったのでしょうか」と落胆していた。
遡上数は1983年が21匹だったが、95~97年に魚道を改修して魚が上りやすくなると、次第に増加していった。2005年ごろから上昇幅は大きくなり、13年には最多の1万8696匹を記録。だが、その後は急激な減少傾向に転じた。令和に入った19年以降は千匹を割り、23年は過去最少となる11匹まで落ち込んだ。
国内の川でふ化したサケは、春に体長5センチほどとなって海へ下る。ロシア近海の北太平洋で3~5年過ごし、数十センチの大きさまで成長すると、産卵のために生まれた川へ帰ってくる。近年は、気候変動がもたらす海水温の上昇が指摘されるようになった。加須市にある県水産研究所の担当者は、利根川でサケの遡上が激減した理由は現時点では明らかではないとしつつ、「サケは8~13度の冷たい海水に適応した魚。北太平洋の水温が上がっているとすれば、成長にかなり影響があると思う」との見解を示す。
水資源機構は07年度から毎年、行田市内の小学生を対象として、秋にはサケの遡上と採卵の観察会を開催。卵を管理所内などでふ化させ、早春には稚魚の放流会を実施してきた。ところが、23年以降は遡上数があまりにも減ったため、どちらも行えていない。管理所の担当者は「地域とのつながりを築き、利根大堰を知ってもらうための象徴的行事だったので、中止になってしまい残念。今度の秋は再びサケが戻ってきてくれるといいが」と願った。










