埼玉新聞

 

「決して諦めない」優れた嗅覚で救助者捜す 全国の被災地で活動、捜索救助犬と命つなぐ訓練 #知り続ける

  • 箱の中に隠れた救助者役を発見した救助犬=久喜市

 優れた嗅覚で倒壊した建物などから救助者を捜し出す捜索救助犬。日本捜索救助犬協会(江口タミ子代表理事、久喜市)は、全国各地の災害現場で活動している。「立ち止まることなく、一分一秒でも早く被災地へ。そして決して諦めない」。災害現場で一人でも多くの命を救うため、犬たちと訓練を重ねている。

 これまで同協会では、東日本大震災(2011年)、広島の土砂崩れ(14年)、昨年の熱海の土石流災害などで捜索活動にあたっている。捜索救助犬は、土砂に埋もれたり倒壊したりした建物の中に要救助者がいないか、嗅覚を使って捜索。救助犬指導手は現場の状況をいち早く把握し、救助犬がけがをしないよう細心の注意を払う。

 同協会には県内をはじめ茨城、千葉県などの会員が所属。災害救助犬として14匹が活動している。犬種は問わないが、保護犬も多いという。会員の各家庭で飼育されて毎日訓練を積み、週末には久喜市のしらさぎ公園隣の訓練場に集まって訓練を行っている。

 訓練は災害現場を想定して機材を組み立て、会員が被災者や行方不明者役となって実施。救助を求めている人の捜索や、化学薬品などで遺体臭を再現させて行う遺体捜索、特定の人物の捜索など多岐に及んでいる。

 同協会運営委員の松山裕之さんは、訓練中に1匹の救助犬を叱っていた。「彼(救助犬)は、自分が何を求められているか、分かっているのに逃げた。そこを許すわけにはいかなかった」。その後、その救助犬が得意なことで成功させてたくさん褒めたという。「精神的なフォローまでが一連の訓練」と、愛情のなかにある厳しさで、“命をつなぐ救助犬”を育てている。

 この救助犬の活動には国、市町村から支援は一切ないという。救助犬の育成費や災害現場までの移動費、装備費は寄付金や自己資金で対応している。代表の江口さんは「国との連携や、提言を行っていきたい。世の中全体で救助犬の活動を支援しようという動きになれば」と話す。

 松山さんは「矛盾しているようだが、出動する機会はないほうがいい。何事もない毎日がいいですから。必要とされれば出動し、必死で捜す。お役に立てれば『良かった』と思う。有事に必要とされるように、地道に頑張るだけ」と口にした。

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