埼玉新聞

 

大宮駅前の老舗店「オガワ」創業90年に 宝飾、眼鏡、時計の専門 行列できた店、引き継がれる信念

  • 90年の老舗の歴史を守る店舗スタッフ

  • (左)大宮駅東口一帯の火災で類焼した後、同店のあった場所に1962年に建てられた大一デパートに入居(同店提供) (右)初期の小川時計店の店舗=1953年頃(同店提供)

 大宮駅東口駅前にある宝飾、眼鏡、時計の専門店「オガワ」は昨年90周年を迎えた。初代代表の小川管吉さんが1931(昭和6)年に現在と同じ場所に店を構え時計の販売を始めて以来、この地で街の移り変わりと共に少しずつ形を変えながら老舗の看板を守り続けている。

 創業当時、時計は人生の節目など特別な時に贈る高級品。「それでも店には行列ができたそうです」と本店副支店長の大島淳さん(37)は語り継がれている店の歴史を話す。時計、宝飾品の他に漆器などの贈答品やカメラも販売し、カメラクラブを作り活動していたこともあるという。

 60(同35)年に大宮駅東口一帯で火災があり商店街の一角にあった同店も類焼に遭ったが、2年後に跡地に建った大一デパート(現大一ビル)に入居した。その後、海外の商品も扱うようになり現在では宝飾、眼鏡、時計を販売。大一ビル内の1階と地下のつながった本店を含め大宮に2店舗と、ウェブ店舗「ドールオガワ」を展開する。

 ドールオガワは3代目代表小川和信さん(79)の長女の寧子さんが周囲に反対の声があった中、2003(平成15)年から大手通販サイトに出店。今ではインターネットで同店を調べた客から他店で見つけられなかった商品を探してほしいと注文が入ることもあるという。

 きらびやかな商品が並ぶ本店内は上品な雰囲気と共にどこか親しみやすさ、居心地の良さを感じさせる。常連客と商品を検討しながらしばらく会話をしていた店長の山口利夫さんは、同店の特徴を「アットホーム。お客さまはこの人から買う、と担当者を頼ってくる。気心知れたスタッフに本音で聞けて相談できるのがいいのでしょうね」と話す。

 和信さんは「父(2代目正二さん)の時代は腕時計の仕入れは銀座の服部時計店(現和光)に行き、本体とバンドが別々だったので店で大勢の職人が組み立て、販売しました」と当時の様子を説明。「先々代からの座右の銘『至誠一貫』と、父からの言葉『関わったすべての人、物、事に感謝をして明るく楽しく今を大切に』を受け継いだ」と話す。和信さんの妻で専務の知子さんも「お客さまに喜んでいただく、その思いをつないできた90年。地域の皆さま、関わった全ての人のおかげ」と店の歴史を振り返る。

 大宮駅東口では再開発が進み同店が入る大一ビルと旧中山道を挟んで向かいの中央デパートの跡地には新しいビルが建ち、今春、複合施設が誕生する。街はまた大きく変わろうとしている。

 同社は昨年、和信さんから寧子さんへ代表が引き継がれた。寧子さんは「これからの時代に心を潤す必需品を扱う心の通う温かい店としてやっていきたい」と話す。和信さんは「先代が築いてきた精神を大切にしつつも時代の変化に応じて変わっていくことを期待しています」と老舗の行く末を見守る。

 【メモ】宝飾、眼鏡、時計の「オガワ」 大宮区大門町1の24。電話048・641・1722。営業時間午前10時~午後6時半。水曜定休。

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