埼玉新聞

 

郊外移住に家族で長く暮らせる「木の家」を 埼玉・所沢で同級生2人が起業、テレワークや子育てにぜひ

  • 3世帯が入居する板壁の建物(右)と黒板壁の4世帯が入居する建物の二つで構成される「mokume所沢」=所沢市下安松(千刻提供)

  • 賃貸住宅事業を起業した武藤光さん(左)と福地正風さん=所沢市下安松

 賃貸物件の企画開発を通じて地域の魅力を発信しようと所沢市出身の武藤光(こう)さん(28)と福地正風(まさかぜ)さん(27)が会社勤めの傍ら昨年6月に起業した。同市下安松に木造一戸建てのような賃貸住宅「mokume所沢」を建築中で、19日から入居者の募集を開始した。2人は「所沢を外から見たことで、再認識した地域の魅力を事業を通じて発信したい」と話している。

 建物はリモートワークや子育てに適した防音性能を備え、賃貸では珍しい無垢(むく)材やしっくい壁などを採用したこだわりぶり。周囲は市街化調整区域で自然林や畑が広がる。2人は「近年高まる都心から郊外への移住需要に応え、テレワークなど多様なワークスタイルにも対応し、幅広い世代に向けて家族で長く暮らせる『木の家』を目指した」という。集合住宅ではあるが一戸建てが連続したような独特な外観の2棟で構成され、全7室。間取りは全室2LDK+ロフトで面積は65~82平方メートル。家賃は13万~16万円となっている。

 2人は市立東中学校の同級生でテニス部に所属していた。「部の1、2番手を争い、勉強でも競い合っていた」と武藤さんは振り返る。中学卒業後は別々の高校に進学、大学も武藤さんが東京外国語大学、福地さんが東京大学と違う道を歩み交流はなかったというが成人式で再会し意気投合した。それからは芸術や運動、学問など趣味や価値観が近く、一緒にトレイルランを楽しんだりするようになったという。

 2020年11月ごろ、毎週末の朝に一緒にランニングをし、その後勉強をする朝活で、お互いがビジネスアイデアを練るようになった。また同時期に武藤さんの父親から所有する築40年を超えるアパートが入居者がなく負債となっていることについて相談を受けた。大手不動産会社に任せて賃貸経営をする道もあったが、自分たちで不動産開発を進める道を選び、昨年6月に「千刻(せんこく)」を創業した。

 社名には「千の時を経てもなお味わいが増す木造住宅を目指す」「家族が過ごす何年・何千時間という豊かな時間を生み出したい」との思いが込められている。建築を担う工務店を巡るうちに「どうせ作るならもうかるものより良い物を作りたい」との思いが強くなり、細部までこだわった木造住宅を作り上げることとなった。

 「会社勤めの傍ら時間も限られていたが、2人だったからこそ補い合ってここまでたどり着くことができた。一人ではここまでできなかった」とお互いに振り返り「愛着を持てる土地の魅力を引き出したい」と意気込む。

 物件の見学や問い合わせは同社(電話050・3577・1059)もしくはインターネットで「千刻 所沢」で検索しウェブページへ。

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