埼玉新聞

 

血だらけ…立てこもり男逮捕、人質死亡 近隣住民が驚き「母が病気で、近所同士で付き合えないと言われた」

  • 緊張が張り詰めた現場付近で警備に当たる警察官ら=28日未明、ふじみ野市大井武蔵野

 27日午後9時ごろ、ふじみ野市大井武蔵野の住宅で、男が猟銃のようなものを持ち、医師の鈴木純一さん(44)を人質に立てこもった。県警は約11時間後の28日午前8時前、住宅に突入し無職渡辺宏容疑者(66)を殺人未遂容疑で逮捕した。県警によると、鈴木さんは病院に搬送されたが死亡が確認された。鈴木さんと一緒にいた男性理学療法士(41)が銃のようなもので胸の辺りを撃たれて重傷を負った。もう1人の男性は顔に催涙スプレーのようなものをかけられたという。県警はトラブルの有無など詳しい経緯を調べている。

 現場は東武東上線ふじみ野駅から西に約3キロ離れた住宅地の一角。近くには小学校や中学校がある。

 近くに住む女性(69)は銃声を聞いた。「お風呂に入っていたら、ボーンという音が聞こえた。今まで聞いたことのないような音だった」と振り返る。様子をうかがいに外に出ると、パトカーや救急車などがたくさん来ていたという。「警察官にも『立てこもりが発生したので外に出ないで』と言われた。銃を持っている人がいたなんてびっくり」と振り返った。

 近所の男性(43)は銃声を2回聞いた。「男性が血だらけの状態でお腹のあたりを抱えてうずくまっていた。女性が『救急車』と叫んでいた」と話す。一時避難した男性は「すぐ終わると思っていたが気づいたら大ごとになっていた」と話した。

 避難した10代の学生は「帰ってきたら自宅が規制線でふさがれていたという。「家に入ろうとしたら、危ないので避難してください」と言われ、避難所に身を寄せた。

 近くに住む無職男性(91)は渡辺容疑者について、「トラブルは聞いたことない」と語る。渡辺容疑者らが引っ越してきた際、「母親が病気で、近所同士で付き合えないと言われた」。会話の際は普通の人だと思ったが、「銃を持っているなんて知らなかったし、そんなことをするなんて思いもしなかった」と驚いていた。

 事件にふじみ野市も対応に追われた。市危機管理防災課によると、事件発生の情報や避難、現場に近づかないよう呼び掛ける案内を随時ホームページや防犯情報メール、会員制交流サイト(SNS)を通じて発信した。

 また、警察からの依頼で27日午後11時50分ごろ、現場近くの市立大井西中学校に避難所を開設し、最大99世帯214人が一時避難した。避難者には毛布や軽食の提供が行われた。さらに避難者が増加することが見込まれたため、28日午前5時ごろには市立三角小学校にも避難所を開設した。

 避難所となった小中学校2校と現場に近い市立西原小学校の3校は28日、臨時休校となった。

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