埼玉新聞

 

<衆院選>埼玉の終盤情勢、1~5区まとめ 大物議員ら続々と応援に駆け付ける 激しい猛追、情勢変わるか

  • 衆院選、埼玉の終盤情勢

 31日に投開票される衆院選で、埼玉県内15小選挙区の終盤情勢を探った。約3割の有権者が投票先を決めておらず、終盤の動き次第で情勢は変わる可能性がある。

■1区、村井先行 武正追う

吉村 豪介 40☆維 新

中島 徳二 62 無 新

武正 公一 60☆立 元(6)

佐藤 真実 37 無 新

村井 英樹 41☆自 前(3)

 4期連続を目指す自民の村井が先行する。前回は比例復活を果たせず、返り咲きを狙う立民の武正が追う展開で、2候補が抜け出している。

 村井は自民総裁選で派閥会長の首相の岸田文雄を支えた。自民で最年少の首相補佐官をアピールし、「この国の未来を切り開く」と主張。公明から全面支援を受け、小選挙区は村井、比例は公明と呼び掛けている。補佐官の公務で選挙活動は制限され、4野党共闘への警戒感も。岸田首相、前環境相の小泉進次郎が応援に入り、陣営の引き締めを図る。

 武正は県内で初めて、立民、共産、れいわ、社民の4野党の統一候補として、市民団体と政策合意した。前回の共産候補の票を上積みすれば、村井を上回り、目標は11万票と設定。4年間の浪人時代には、選挙区を精力的に回った。共産への反発もあることから、陣営は「単純にプラスになるとは思っていない」としており、無党派層の票も鍵となる。

 維新の吉村は自民や立民では改革を断交できないとして、ベーシックインカム(最低所得保障)などの政策を主張。佐藤は市民目線の政治、中島は格差是正を訴えている。

※1区=さいたま市見沼区(一部地域を除く)、浦和区、緑区、岩槻区

■2区、新藤が安定した戦い

新藤 義孝 63☆自 前(7)

高橋 英明 58☆維 新

奥田 智子 52 共 新

 8選を目指す元総務相で自民の新藤が安定した戦い。自民市議や20の自民党支部、約400の推薦団体・企業を通じた集票システムを生かす小規模演説会を重ね、足元を固める。共産の奥田は事実上の野党共闘候補として街頭で「政権交代」を訴え、追い上げに懸命。地元市議だった維新の高橋は街頭で維新の政策をアピールし、浮動票などの取り込みを狙う。

 新藤は新型コロナウイルスをコントロールしながら、経済の立て直しと社会活動を取り戻すことに主眼を置く。保守層、公明支持層へ浸透を図り、8選を射程内に捉える。奥田は県議の経験があり、過去に衆院選や参院選に挑戦しており、一定の知名度がある。

 2014年衆院選は民主が候補の擁立を見送り、新藤と奥田の一騎打ち。新藤12万8千票に対して、奥田は水面下で民主勢力の応援を得て7万票を獲得。前回17年は新藤の11万票に対し、希望の新人が6万4千票、共産の新人が3万4千票を得ており、野党で9万8千票を積み上げた。

「川口は自民より野党が強い。野党への追い風が吹けば激変する怖い選挙区」と新藤陣営は警戒する。

※2区=川口市(一部地域を除く)

■3区、黄川田が一歩リード

黄川田仁志 51☆自 前(3)

山川百合子 52☆立 前(1)

河合 悠祐 40 N 新

 前回(2017年)接戦となった自民の黄川田が立民の山川をわずかにリードしている。

 公明の推薦も受ける黄川田は、「比例は公明、小選挙区は黄川田に」と呼び掛け、自公の支持層固めを図る。元首相の安倍晋三、前首相菅義偉らが次々と選挙区入りし、票の上積みに力を入れる。越谷では、衆院選と同日31日に投開票される市長選の自民推薦候補と連携して活動し、相乗効果も狙う。

 民主の元衆院議員細川律夫の地盤を引き継ぐ山川は、駅頭などでの街頭演説を中心に活動を展開。子育て支援などを強調し、立民、共産支持層への浸透を図りながら、無党派層の掘り起こしにも懸命だ。23日には幹事長の福山哲郎が選挙区入りし、「古い政治と新しい政治の一騎打ち。この選挙で政治を変えていきましょう」などとアピールし、反自民層などへの支持を呼び掛けた。

 「NHKと裁判してる党弁護士法72条違反で」の河合は、選挙区内での表立った活動はなく、動画配信などインターネットでの活動を中心に展開している。

※3区=草加市、越谷市(一部地域を除く)

■4区、穂坂が支持固め優位

遠藤 宣彦 58 無 元(1)

工藤  薫 71 共 新

穂坂  泰 47☆自 前(1)

浅野 克彦 47☆国 新

小笠原洋輝 37 無 新

 前職と元職、新人の5人が乱立した選挙区で、自民の穂坂が先行している。これを国民の浅野と共産の工藤の新人2人が追い掛けている。いずれも無所属の遠藤と小笠原は苦戦している。

 前回2017年の衆院選で初当選した穂坂は地元首長や市議らの支援のほか、医師会など約40団体の推薦を受け、支持層を固めた。自転車での遊説や辻演説を中心の活動を展開し、保守層や浮動票の上積みを狙う。

 元都議の浅野は駅頭を中心に演説とビラ配布を重ね、知名度の浸透に全力を挙げる。公示後は選挙区内の有権者や若者をターゲットにユーチューブをアップ。選対幹部は「再生回数は20万回を超えた」と手応えを語る。

 元新座市議の工藤は駅頭をはじめ1日20カ所の辻演説をこなすほか、会員制交流サイト(SNS)で気候変動やジェンダーなどの公約を掲げるとともに、立民などとの野党共闘をアピール。与党への批判票や浮動票の取り込みに躍起だ。

 公示前日に出馬表明した遠藤は出遅れが否めず、小笠原は街宣活動はせず、ネットで政策を訴える。

※4区=朝霞市、志木市、和光市、新座市

■5区、枝野に牧原が猛追

枝野 幸男 57☆立 前(9)

牧原 秀樹 50☆自 前(4)

 立民代表の枝野と自民の牧原の前職2人が6度目の対決。これまで全勝の枝野を牧原が激しく追い掛けている。

 枝野は党の顔として全国を駆け回り、不在中は地元県議や市議が街宣車で政策を訴える。23日の公示後初の地元入りでは「有権者の皆さまは(党結成の)4年前も私の決断を温かく支えてくれた」と感謝の言葉。そして自公の政権運営を批判し「さいたま市から政治を変えよう」と呼び掛けた。抜群の知名度と強固な地盤を生かして立民や共産支持層の票を固め、今後は無党派層からの取り込みが鍵となる。

 対する牧原は自転車も使い「地元密着」を全面アピール。過去4回の当選は全て比例復活だけに、今回を「雪辱戦。野党党首を倒し波乱を」と意気込む。前回(2017年)は枝野に約4万2千票差と引き離されたが、前々回(14年)は自民が「重点区」として幹部を次々に投入。約3千票差にまで追い詰めた。今回も元首相の安倍晋三、前首相の菅義偉の応援を2日連続で受けるなど、最後の追い込みに力を入れる。陣営関係者は「接戦に持ち込めば勝機は必ずある」と手応えを話す。

※5区=さいたま市西区、北区、大宮区、見沼区の一部地域、中央区

【表記説明】候補者は届け出順。敬称略。年齢は投票日の10月31日時点での満年齢。☆は比例北関東ブロックとの重複立候補を表す。党派の略称は、自由民主党=自、立憲民主党=立、公明党=公、日本共産党=共、日本維新の会=維、国民民主党=国、NHKと裁判している党弁護士法72条違反で=N、無所属=無。前、元、新は前職、元職、新人の略。(数字)は当選回数。

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