2019年10月30日(水)

「翔んで埼玉」テレビ局からクレームも押し切る 脚本・徳永さんが裏話 苦情ヒヤヒヤも「良い人ばかり」

「翔んで埼玉」をきっかけに埼玉の魅力を語る脚本家の徳永友一さん(左から2人目)=26日午後、草加市の獨協大学
映画「翔んで埼玉」制作の舞台裏やエピソードを紹介する徳永友一さん

 映画「翔んで埼玉」から埼玉の魅力を考えようと、獨協大学が26日、草加市内で同映画の脚本を書いた徳永友一さんを招き講演、シンポジウムを開いた。(保坂直人)

 講演、シンポジウムは同大学地域総合研究所(倉橋透所長)が開催。徳永さんは同大法学部卒。徳永さんは、映画制作の裏話や埼玉の魅力について語った。

 徳永さんは原作から脚本を作る際に悩んだエピソードを紹介。娘の結納のため、熊谷から東京に向かう道中、ラジオで伝説を聞くという流れを設定した。三谷幸喜さんのコメディ映画から着想を得たと明かした。

 「芋づる式にアイディアが膨らんだ。お父さんは典型的な熊谷出身、お母さんを千葉出身にすることで、埼玉対千葉の展開を作ることができた」と徳永さん。

 もう一つ、映画の中で東京を敵にするという課題も、卓抜なアイディアで乗り越えた。「高みの見物をしている東京をディスってやろう」。都知事を悪者に仕立て、群馬に賄賂を送ることで映画の大枠を整えた。

 スタッフみんなで面白いと仕上がった脚本だったが、クランクイン間近でテレビ局からクレームが。「ディスる」場面をめぐり「表現を和らげろ」と批判を受けた。

 徳永さんは、今回の映画の根底に流れる「ディスる」意味の本質を強調。「最初にディスって虐げられ、勝ち取っていくなかでカタルシスが生まれる」と押し切った。

 一方、映画を完成させるために批判を受けた箇所を修正し「ディスり」に磨きをかけた。スタッフとアイディアを出し合い、埼玉人を「捕獲」するためのセンサーや小道具を発案し脚本を仕上げたという。徳永さんは修正前と後の脚本を手に、苦労話を語り会場を沸かせた。

 映画公開に向け、制作サイドは不安でいっぱいだったとも。「苦情が来ないかみんなヒヤヒヤした。(公開後)苦情はなく、埼玉の動員数が一番多かった。そこから火が着き、大きくすることができた」と手応えをつかんだ。

 大ヒットとなった「翔んで埼玉」。徳永さんは「この映画は愛のあるイジリはどんどん入れて良いということを教えてくれた。みんな郷土愛を持っている。今の時代の郷土愛を映画で訴えることができた」とまとめた。

 シンポジウムでは経済アナリストで同大学経済学部の森永卓郎教授が埼玉と東京を比較し埼玉の住みやすさを分析。「埼玉は良い人ばっかり。物価も安い」と絶賛した。他方で都内の物価の高さなどを「ディスっ」た。

 同大学外国語学部、観光学が専門で川越出身の鈴木涼太郎准教授は映画に触れ親しみを込めた上で「川越の蔵造りや秩父の魅力も出してほしかった」と注文をつけた。

 徳永さんは埼玉の観光について「聖地巡礼と言われているように、映画やドラマのロケ地となることでファンが集まる」と映画が観光資源になる可能性を訴えた。

=埼玉新聞WEB版=

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