2019年4月29日(月)

高齢ドライバー事故、繰り返される悲劇に「またか…」 埼玉県内の事故で娘亡くした遺族、制度見直しを訴え

母子らが死傷した事故現場で手を合わせる人たち=27日午後、東京都豊島区
高齢ドライバーによる事故で亡くなった娘の遺影を見詰める稲垣智恵美さん=さいたま市緑区

 高齢ドライバーによる悲惨な事故が後を絶たない。19日には東京・池袋で母子2人が死亡、けが人10人が出る事故が発生。運転手は87歳と高齢で、運転操作を誤った可能性が指摘されている。「免許を持つ意味を考え、制度の見直しを進めてほしい」。高齢ドライバーの運転による事故で高校生の娘を亡くした埼玉県内の遺族は訴える。

■後絶たたぬ高齢者運転事故

 10連休が始まった27日午後。大勢の人が行き交う東京・池袋の駅前から歩いて数分の歩道には花を手向けたり、手を合わせたりしていく人が次々と訪れていた。

 献花台にはたくさんの花や菓子などが供えられ、冥福を祈るメッセージも。19日にこの場所で、31歳の母親と3歳の娘は暴走した車両にはねられ、命を落とした。

 「自分にも小さな子どもがいる。ひとごととは思えないし、思ってはいけないと思う」。現場を訪れた男性はそう言って手を合わせる。70代の男性は「"自分は大丈夫"と思っていたが、免許返納なども考えないといけないかな」と話した。

■機能の衰え把握を

 県内でも多くの高齢者が運転免許を保有し、車を運転している。県警運転免許課によると、県内の75歳以上の運転免許保有者は昨年末時点で全国3番目に多い約29万人。過去5年間で8万6千人近く増えた。埼玉県は全国トップクラスの早さで高齢化が進むとみられており、運転免許保有者は今後、さらに増える可能性がある。

 一方、自主的に運転免許を返納した75歳以上は昨年末時点で約1万5千人。5年間で約1万人増えた。自治体によっては自主返納者にタクシーやバス利用券を配布するところもある。さらに「(重大な事故を報じる)報道の影響や家族の勧めもあるのではないか」と同課は分析する。

 だが地域によっては交通の便が悪く、買い物や通院などで車がないと生活ができない高齢者もいる。同課は「認知機能検査などで自らの認知機能や身体機能の衰えなどを把握してもらい、家族と話して免許を返納するなどの対応を考えてほしい」と話す。

■考え直して

 「またかという思いと、(事故の状況が)すごくショックなのと…」。2015年12月にさいたま市浦和区で高齢者が運転する車にはねられ、高校1年の娘稲垣聖菜さん=当時(15)=を亡くした母親智恵美さん(49)は悲劇が繰り返されたことに、涙をこらえながら話す。

 聖菜さんの事故を巡っては、16年12月にさいたま地裁で運転手に禁固1年6月の判決が言い渡された。事故後、稲垣さんは高齢者の免許制度の見直しなどを訴え、同様の事故の裁判も傍聴してきた。免許返納者の割合が増えていることを肯定的に捉えつつも、「自分は大丈夫と思っている人もいる。高齢者の認識がもっと変わってほしい」。そう感じている。

 高齢者の免許について、智恵美さんはブログ(http://seina.jp/)などを通じて更新時期の期間変更やシミュレーションテストの導入、環境整備などを訴えている。今回の事故を受け、智恵美さんはこう言葉に力を込めた。

 「何かが変わっていれば、避けることはできた事故。なぜこの事故が起きたのか。どうすれば助かったのか。改めて考え直してほしい」

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