2020年4月5日(日)

高1女子、高齢ドライバーにはねられ死亡 遺族ら、免許更新制度の改正訴え「利便性より命守る制度を」

聖菜さんの遺影を手に話す母親の稲垣智恵美さん=2月26日、さいたま市緑区
稲垣聖菜さん(遺族提供)

 尊い命を守る制度を―。さいたま市浦和区で2015年、高齢ドライバーの車にはねられて死亡した高校1年の稲垣聖菜さん=当時(15)=の遺族らが、免許更新制度の改正などを訴え続けている。インターネットで集めた署名は約5万筆に上り、2月に内閣府などに提出された。

 事故が発生したのは、16歳の誕生日を2日後に控えた2015年12月23日。聖菜さんは大好きなロックバンドのコンサートに行こうとJR浦和駅に向かう途中、妻を駅まで送っていた高齢男性=当時(80)=の車にはねられた。アクセルとブレーキの踏み間違いによる事故で、男性には裁判で禁錮1年6月が言い渡された。

 「『駅まで送っていけばよかった』と自分を責めた。どうしたらいいのかも分からず、現実を受け入れきれなかった」と母親の智恵美さん。食事も喉を通らず、聖菜さんの遺骨を抱えて過ごす日々が続いた。

 そんな中、事故から3日後、聖菜さんの中学時代の同級生が中心となってインターネット上で署名活動を開始。高齢者の免許更新制度の改正などを求め、「友達の死を無駄にしたくない」と協力を呼び掛けた。

 取り組みを知った智恵美さんも16年にブログを開設。事故の詳細や署名活動への協力だけでなく、事故後も変わらず聖菜さんの元を訪れる友人たちの様子をつづってきた。

 球技大会、新体操クラブの合宿、卒業式―。友人たちは、聖菜さんにちなんで「せなうさ」と呼ばれているウサギの縫いぐるみをいろいろな場所に連れ出した。「娘がやりたかったこと、行きたかった所に連れていってくれる。聖菜がいるものとして過ごしてくれる姿に救われた」と智恵美さん。今年1月の成人式には、黒地にウサギ柄の振り袖を着たせなうさが友人と一緒に式典に出席した。

 事故から約4年3カ月。署名活動を始めた当初は「高齢者による事故」という点にはあまり目が向けられず、さまざまな意見が寄せられた。「娘は危険な運転の犠牲になったのに、何も変えてあげられない」。やりきれない思いもあったが、同じように高齢ドライバーによる運転に疑問を投げ掛ける人たちが賛同し、これまで4万7697筆(2月18日現在)の署名が集まった。

 集まった署名は2月18日、智恵美さんら両親と聖菜さんの友人5人が東京・永田町の衆院第1議員会館を訪れ、内閣府の担当者らに手渡した。

 3月3日には、道交法改正案が閣議決定。一定の違反歴がある75歳以上に実車試験を義務付けるなど、高齢運転者対策が盛り込まれた。

 智恵美さんは「命がなければ何もできない」と力を込める。運転のシミュレーションテストなど客観的に運転技能を判断し、運転者本人が認識できる制度や新しい基準が必要だと感じている。「利便性でなく、安全な生活を守るため、何より尊い命を守るための制度を設けてほしい。気持ちを新たにまた呼び掛けていきたい」と聖菜さんの写真を見つめた。

 署名では後期高齢者(75歳以上)の免許更新を毎年実施すること▽免許更新時のシミュレーションテストの義務化▽循環バスの拡充など、免許返納後の交通手段の確保▽自動車技術開発の発展―を求めている。

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