埼玉新聞

 

なぜ?コロナでオンライン授業も扱いは「出席停止」 さいたま市教委「国が通知」 内申恐れる保護者も

  • オンライン授業、さいたまの市立学校では参加しても「出席停止」に

 新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、さいたま市立学校で2学期から開始されたオンライン授業。オンライン授業に参加しても「出席」ではなく、「出席停止」の取り扱いについて、13日の市議会文教委員会で質疑が行われた。福岡市など一部の自治体が「出席」扱いとしており、さいたま市教委側は、「出席扱いにできないかと、文部科学省に問い合わせを繰り返してきたが、今年2月の通知の通りと回答を受け、現状では通知に従っている」と述べた。

 文科省の2月の通知によると、「非常時にオンラインを活用して実施した特例の授業」として、指導要録に参加日数や実施方法を明記し、「出席停止」として扱うとしている。一方で、文科省はコロナ前の2019年10月、不登校の児童生徒がオンライン授業を受けた場合、一定の要件を満たせば、「出席」の取り扱いとする通知を出している。

 さいたま市教委の担当者は文教委で、不登校の児童生徒とコロナ感染不安の児童生徒の扱いについて、「どこが違うかを文科省に問い合わせた。不登校の子どもたちを応援するという観点で出席扱いにしており、今回は感染不安ということで、意味合いが違うと説明を受けた」とした。

 文科省は出席停止の扱いによって、児童生徒に不利益が出ないように求めている。市教委側は「児童生徒の不利益にならないことを最大限に考えた。オンラインは特例の授業として、指導要録に学んだ日数が記録される。出席扱いの方が分かりやすいと思うが、現時点では文科省の通知に従っている。(出席扱いにできるように)今後も働き掛けていきたい」と述べた。

 市教委指導1課によると、8月27日時点で、オンライン授業を希望した児童生徒は小学校で約21%、中学校で約12%だった。緊急事態宣言の延長が決定した後の9月10日時点の調査では、小学校が約20%、中学校が約10%と1~2ポイント下がった。通信障害が起きるなどしたため、登校に切り替えた児童生徒もいるとみられているが、「理由は分析していない」としている。

■全国で分かれる対応 福岡市は「出席」扱い

 さいたま市教職員組合(大沢博委員長)によると、保護者からオンライン授業の「出席停止」扱いについて、「やむなくオンラインで学ぶ子どもを出席停止とは納得できない」「中学生は出席扱いにならないなら内申に響くかもしれないと恐れ、登校させている家庭が少なくない」などと意見が寄せられている。

 オンライン授業の「出席」扱いについては、全国で対応が分かれている。福岡市教委は昨年5月、約3カ月の臨時休校後に学校を再開。翌月には、感染不安や基礎疾患のある児童生徒へのオンライン授業を始めた。不登校の児童生徒らからの要望を受けて、昨年7月にオンライン授業の対象を拡大。いずれも市予算でタブレット端末を準備して、児童生徒に貸与した。

 文科省の通知に従うと、同じオンライン授業を受けて、不登校の児童生徒は「出席」、感染懸念の児童生徒は「出席停止」となる。福岡市教委の担当者は「どのように考えても矛盾が生じている。福岡市としてはこの矛盾に対して、合理的な説明を保護者にも市民にもできない」と判断したという。昨年12月に、感染懸念の児童生徒がオンライン授業を受けた場合、「出席」扱いとする通知を出した。担当者は「出席扱いにすることで、子どもたちは安心して学習に取り組める」と話していた。

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