埼玉新聞

 

ショック…女性が尿管損傷 埼玉・行田総合病院、極めて珍しい「尿路再建術」で治療成功「本当に良かった」

  • 手術した女性(左)を診察する沢田陽平医師(行田総合病院提供)

 行田市持田の行田総合病院で昨年11月、40代女性に対し、手術支援ロボット「ダヴィンチ」を用いた尿路再建術が行われた。同病院によると、ダヴィンチによる尿路再建術は保険適応外で、全国的にも極めて珍しいという。患者の負担を軽減させるため、最先端の医療機器を使用し、尿路再建術を成功させた。

 女性は昨年6月、別の病院の手術で左尿管を損傷。手術の際に尿管が傷付き、膣(ちつ)から尿が漏れる状態だった。腹腔(ふくくう)鏡手術では、尿管と膀胱の縫合が困難と予測された。ダヴィンチでは剥離や縫合といった手技が容易になる。縫合の確実性が高まり、合併症を回避し、より安全な手術が期待できることから、ダヴィンチでの手術が検討された。

 院内の倫理委員会で承認を得たが、保険適応外(自費)診療となる問題があった。泌尿器科チームで検討を重ねロボットで使用する鉗子(かんし)本数を抑え、入院日数も通常より半分以下の3泊4日に設定。昨年11月29日に入院、翌日に手術を行い、12月2日に退院した。手術は無事に成功し、手術後の経過は良好である。

 手術を受けた女性は尿管損傷の話を聞いた当初はとてもショックを受けたが、同病院でさまざまな医師や看護師に親身に接してもらい、治療に対して前向きになったという。ダヴィンチ以外の保険診療についてもさまざまな治療法を聞いたが、夫と相談しダヴィンチ手術を希望。「1センチ程度の傷が四つだけであまり目立たず、この治療法を選択して本当に良かった」と語った。

 手術を担当した同病院泌尿器科副部長の沢田陽平医師(42)は当初は開腹手術での尿路再建を考えていたが、同僚医師からロボット支援による海外の尿路再建術の報告例を聞き、チームで検討した結果、成功できたという。「保険適応外のため日本では極めて少ない事例だが、最先端の医療機器を用いることで、患者の負担を少なくする方法があることを多くの人に知ってもらえれば」と話した。

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