埼玉新聞

 

赤いドレスや着物姿に笑顔 還暦の同級生4人、静かに楽しい思い出つくり 埼玉・秩父の貸衣装店で記念撮影

  • 着物姿で、静かに華やかに還暦を祝う同級生の4人=13日正午ごろ、秩父市中町の貸衣装店「ふじや衣裳」

 「すてき、かわいらしいね」「早くドレス姿も見てみたい」。今年還暦を迎える中学の同級生4人は、初めてお互いの着物姿を見て、少し照れながらほほ笑み合った。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、友人や知人と気軽に会えない状況が続く中、4人は昨年11月、秩父市中町の貸衣装店「ふじや衣裳(いしょう)」に今年5月に集まって、静かに還暦を祝う約束を交わしていた。念願の還暦旅行はかなわなかったが、華やかな着物とドレスをまとった4人は、「一生に一度の還暦の思い出がつくれた」と、晴れやかな表情を浮かべていた。

 還暦を祝福する赤色を基調とした着物姿で写真に納まる、上田淑江さん(59)、樺沢由紀子さん(60)、宮島朱美さん(59)、斉藤礼子さん(59)の4人は、本庄市立北泉中学校(現本庄南中学校)の同級生。卒業後は別々の進路を選び、それぞれ家庭を持ち、県内外で生活を送っているものの、友人関係は変わらず45年以上続いている。

 還暦の同級会を計画した樺沢さんは「本当は旅行に出掛けて4人の還暦を祝いたかったが、コロナ禍ではどうしても気が引けてしまう。何か違う方法で、静かに楽しく祝えないかと思っていた」と話す。

 4人は27年前から、1人月2千円の積み立て貯金を始め、旅費がたまる度に旅行に出掛けていた。還暦を迎える今年は、格別の思いで久々の再会を楽しみにしていたが、昨年から外出自粛の要請が続き、旅行の計画を進めることができずにいた。

 昨年11月、樺沢さんから同店の還暦ドレスフォトサービスの利用を勧められた3人は、迷わず賛同した。「還暦の記念撮影は、赤いちゃんちゃんこのイメージが強く、少し抵抗があったが、ドレスや着物で撮影できると聞き、この日が来るまでわくわくしていた」と宮島さん。

 4人はこの日、午前は上品な着物姿を、午後は華々しいドレス姿を披露し合った。1年半ぶりの再会で積もる話もたくさんあるが、撮影時以外はなるべく距離を取り、控え気味に会話した。「外出自粛で会える機会は減ったが、その分、携帯電話でつながる時間が増えた。おしゃべりはその時に済ませている」と4人は口をそろえる。

 斉藤さんはドレスを着るのは挙式以来。「もう二度と着ることはないと思っていた」と笑顔。上田さんは「撮影だけで1日が終わるが、十分盛り上がることができた」と満足していた。

 ふじや衣裳では2019年、還暦の女性を対象としたドレスフォトサービスを開始。同店を営む木崎祐子さん(44)によると、10年前までは赤いちゃんちゃんこで還暦を祝う利用者も多かったが、近年は「恥ずかしい」「年齢を感じる」などの理由で着用を控える人が増えた。

 同店では、プロのヘアメークと着物、ドレスで写真を残す新しい還暦祝いの形を提案している。木崎さんは「女性はきれいになることは、何歳になっても楽しい。今の60歳はまだまだ若いので、着物やドレスで思い思いに着飾って、コロナ禍で盛大に祝えない分、記念撮影で大切な思い出をつくってほしい」と話していた。

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