埼玉新聞

 

生理の貧困、昔から 生理用品ない子、保健室で迎えた元養護教諭「いじめられないように」 隠された真実

  • 窓口には専用のカードを配置。声を出さずに指さすことで、女性職員らが対応する=5日午前、浦和区役所保健センター

 新型コロナウイルスによる経済的な困窮で生理用品が買えない「生理の貧困」。コロナ禍でクローズアップされ、自治体などで支援が広がりつつある。一般社団法人「“人間と性”教育研究協議会」(東京)代表幹事の金子由美子さん(64)は「つらい思いをしてきた子どもたちは昔からいる。子どもの貧困にジェンダーの視点は欠かせない。隠されてきたことに目を向けられたことは良いことで、いいきっかけになればと思う」と話している。

 埼玉県川口市立中学校の元養護教諭で、「保健室の先生」を長く務めた金子さんによると、生理用品を毎月、保健室に受け取りに来る子どもは以前からいた。金子さんは「生理に関して、あまり目が向けられてこなかった。人前で言うなと、当然あることなのに隠されてきた。親が当たり前に準備すると思われていたけれど、1人親家庭は仕事に追われ、できない家庭もある」と語る。

 女の子は脇毛、男の子はひげが生えてきても、カミソリなどを買ってもらえない子がいたという。金子さんは保健室に安全カミソリを常備して渡していた。洗濯をしてもらえないなど、清潔感のない子はいじめの対象になるため、より気に掛けていた。

 病気やけが以外で保健室に行かないように指導する学校もあるという。金子さんは「貧困層の子どもは立場が弱く、自分の権利を主張することが難しい。生理用品を買ってもらえない子、父子家庭の子。毎月取りに来る子には毎月取りに来る理由がある。誰もが出入りできる開かれた保健室が必要」と指摘する。

 さいたま市は5日から学校の保健室のほかに、各区役所の保健センターと福祉課で、生理用品を無償配布する。金子さんは評価しながら、受け取りに行くにはハードルがあるという。「情報を得ているか。権利を認識しているか。バスや電車賃がかかれば、行かない。本当に必要な人に届かないかもしれない。女性の視点によるシステムが必要。薬局で受け取れるようにチケットを渡すとか、他の施設や女性トイレに置くとか、少し工夫が必要」と話している。

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