埼玉新聞

 

埼玉武蔵ヒートベアーズ、立正大と連携 選手の動き分析、立正大が球団にデータ提供 走塁分野の戦力強化へ

  • 連携を結んだ(左から)埼玉武蔵の山崎寿樹代表取締役CEO、立正大学データサイエンス学部学部長就任予定の北村行伸氏、同専任講師就任予定の永田聡典氏、埼玉武蔵の角晃多監督兼GM=18日、熊谷市内

 プロ野球独立リーグ・ルートインBCリーグの埼玉武蔵ヒートベアーズ(埼玉県熊谷市)は今季、同市の立正大学の熊谷キャンパスに今春開設されるデータサイエンス学部と連携し、同学部から提供されるデータを活用してチームの底上げを図る。地域の球団と大学がタッグを組み、戦力強化につなげるのが狙いだ。当面はデータを選手の走塁分野に特化して、足でかき回す機動力野球に磨きをかける。リーグは4月3日に開幕する。

■選手の「一芸」磨く

 「NPB(日本野球機構)の球団がBCリーグの選手に求めているのは、一芸に秀でる選手。例えば盗塁がうまい選手は目に留まりやすい」。埼玉武蔵の角晃多監督兼GMは端的に話す。

 独立リーグ出身ではないが、プロ野球ソフトバンクの主力で、日本代表にも選ばれる周東佑京選手や甲斐拓也選手などは、足の速さや肩の強さといった「一芸」を評価されてプロ入りし、育成枠からはい上がってきた。それだけに、近年は一つでも強みを持っていることが、スカウトらの評価対象になるという。

 さらに近年のスポーツ界では、データ活用も進んでいる。投球動作などを解析して数値化、専門家チームが科学的根拠に基づいて選手を指導。米大リーグでは、野球経験がなくデータ分析に特化したコーチが存在するほどだ。角監督も「技術は感覚的なので、データを活用したい」と期待する。

 連携のきっかけは、1月の埼玉新聞社の企画で角監督と同学部がデータ科学と選手育成について対談したこと。データを活用した指導を取り入れたいチーム側と、新たな研究に取り組みたい大学側の思惑が一致。チーム首脳陣を交えた勉強会でデータの捉え方や分析方法などを共有し、連携を決めた。

 4月開講予定の立正大学データサイエンス学部はビジネス、社会、観光、スポーツを柱にした文理融合型。専任講師に就任予定の永田聡典氏は「特化型データ活用はBCリーグならではの発想。研究としても興味深く、解析データは選手の売りになるかもしれない」と話す。

■けがの予防にも

 当面は走塁に特化。昨季の埼玉武蔵のチーム盗塁数は55個、12球団中7位だった。NPBで公開されている盗塁ランキングの上位選手の数値を基準に、シーズンを通して選手のスタートダッシュやリードの距離、歩幅・歩隔、帰塁など多角的に分析する。年間での測定で個人に合ったトレーニング方法も取り入れ、けがの予防にもつなげる。

 対象選手は3月に行われたオープン戦を踏まえ、永田氏とミーティングを実施。選手からはスライディング方法や最適な走塁ルートの分析なども求めた。参加した金城義選手は「データ活用で走塁がどう変化していくか楽しみ。技術を吸収して、NPBで活躍できる選手を目指したい」と意気込んでいる。

 熊谷市を拠点にする野球チームと大学による連携。18日に同市内で行われた記者会見で、山崎寿樹代表取締役CEOは「チームカラーを出せる良いチャンス。野手は走るチームにしたい。今年は走ります」と宣言し、角監督は「(BCリーグ)12球団で1番の盗塁数を目指す。ベアーズに入団したら、走塁がうまくなる選手になれると思ってもらえるところまで、今回のプロジェクトを成功させたい」と将来を見据えた。

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