埼玉新聞

 

84歳で高校卒業 後悔していた退学…単位通信制に80歳でチャレンジ 目標の卒業「願いかない幸せ」

  • 卒業生を代表して卒業証書を受け取った松浦基美子さん(右)=7日午前、さいたま市北区櫛引町の県立大宮中央高校

  • 松浦基美子さん(前列右)と小池真也校長(同中央)。子どもたち全員が卒業式に出席した

 埼玉県立大宮中央高校(さいたま市北区)で7日、単位通信制の卒業式が開かれ、松浦基美子さん(84)=川口市=が、卒業生352人を代表して、小池真也校長から卒業証書を受け取った。高校を中退して心残りだったという松浦さんは式典後、「良い学校と先生に巡り合えて楽しかった。卒業することが目標だったので、幸せです」と喜んだ。美容師の松浦さんは自ら髪を結い、着付けをして晴れ舞台に立った。4人の子どもたちも式に出席して、願いをかなえた母親を祝福していた。

 松浦さんは現在のさいたま市立白幡中学校を卒業後、美容学校と県立浦和第一女子高校定時制に入学。美容師の資格を取得するため、高校を1年次に退学したという。10代で結婚して4人の子どもを育てながら、川口市などで美容室を7~8店舗経営。現在は引退して、孫10人、ひ孫2人に恵まれている。

 「軽い気持ちで高校を辞めたことを長年、後悔していた。今行かなければ、一生行けない」。松浦さんは2017年4月、80歳で同校に入学する。国語、数学、社会など普通科のカリキュラムを受けてレポートを提出。週1回の面接指導では、自宅から車で通学して、4年間かけて卒業した。数学など苦手な教科も「難しいけれど、楽しかった。先生に見ていただいて、『よくできました』と言われれば、うれしかった」と振り返った。

 保護者として出席した長男の勲さん(63)は「まさか母親の卒業式に出席するとは想像していなかった。コロナ禍で無事に卒業できて、先生方に感謝したい」。長女の大西弘美さん(61)は「80歳のチャレンジ。相談はなく、聞いたときは驚いたが、最後まで諦めなかった」。次男の秀樹さん(59)は「突き進む向上心、たゆまぬ努力を示してくれた」。三男の賢次さん(55)は「4年間よく頑張った。誇らしく、改めて尊敬した」と母親への思いを語った。

 小池校長は「人生の大先輩が、頑張ること学ぶことの大切さを示していただき、うれしく思う。松浦さんが自ら考えて判断して行動したことを、後輩の生徒たちに伝えていきたい」と話していた。

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