埼玉新聞

 

不自由さから解放された 猫の絵で脳梗塞の後遺症乗り越える 生きる気力失いかけた漫画家、小川で個展

  • 「幸せ猫展」の会場。左の作品が「境界線から解き放たれて」=小川町小川の埼玉伝統工芸会館

 埼玉県小川町の埼玉伝統工芸会館で、ジクレー版画展「愛らしい猫に言葉を添えて 幸せ猫展」が開かれている。脳梗塞の後遺症を乗り越えて、活動を再開した大阪府寝屋川市在住のイラストレーター勝間としをさん(69)の個展。28日まで。

 イラストレーターや漫画家として活躍していた勝間さんが、脳梗塞を患ったのは2010年、59歳の時だった。職を失い、生きる気力を失いかけた時、勝間さんを救ったのは友人の勧めで右手で持ったパソコンのマウスと頼まれて描いた「猫の絵」だった。「気づけばたくさんの猫を描いていた」。それが切っ掛けで、2年後には、制作活動を再開した。

 2017年、フェイスブックに発表した作品を通して、ふじみ野市の画商山下悦子さん(71)と出会い、猫の作品をコンピューター技術を駆使したジクレー版画にして、県内の百貨店で初の個展を開催。その後、絵筆で描いたアクリル画や和紙に描いた原画を発表、各地で個展を開いている。

 会場ではジクレー版画を中心にアクリル画、和紙に描いた作品なども展示している。

 作品には、それぞれ言葉が添えられている。例えば「境界線から解き放たれて」には「キミと出会って、ボクのココロの中の境界線は、自由にされて、ボクは不自由さから解放されたよ。だから今日もボクは無防備でいられる。無防備過ぎて困るくらいね。」とある。脳梗塞を患う前は手紙を書くのも苦手だったが、展示の主催者によると、「右手を使うようになり、しばらくすると不思議と言葉がわいてくるようになった」という。

 勝間さんは「私の猫の絵は自分自身の人間の生き様を重ねて描いています。(絵や言葉の中に)僕に似ている、私に似ているな、そういう人間と猫の間の共通点を見いだして、一つの希望、勇気を受け取っていただけたらうれしいな」とコメントを寄せている。

 展示は午前10時~午後3時。月曜日と12、24日は休館。入館料は大人300円、小人150円。

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