埼玉新聞

 

人気で品薄続くエゴマ、特産の美里で搾油作業が最盛期 イノシシやシカの食害に遭わず遊休農地で大規模栽培

  • 搾ったエゴマ油を瓶に詰める製造作業=美里町の「円良田特産センター」

  • えごま油「輝」(左)とエゴマの実

 美里町円良田の農産物直売所「円良田特産センター」で、町特産のエゴマの搾油作業が最盛期を迎えている。

 健康食材として注目を集め、2年ほど前には一時、店頭から姿を消した。同町ではブームに先駆け、4年前から円良田地区の住民が共同作業でエゴマを栽培。油に加工して販売もしている。昨年秋、再びテレビで紹介されると購入者が一気に増加。品薄状態が続いているという。

 エゴマは、α(アルファ)リノレン酸を含み、高血圧や認知症に加え、心筋梗塞など生活習慣病やがんの予防などにも効果があるとされている。

 同町によると、県内でエゴマを大規模栽培しているのは秩父市と美里町だけという。同町円良田地区は円良田湖北側の中山間部。高齢化やイノシシなどの被害で遊休農地が増え、同町は対策を検討していた。

 2015年3月、原田信次町長が出張でたまたま立ち寄った高速道路のサービスエリアで、福島から農産品の販売に来ていた職員に「シソ科植物のエゴマはイノシシなどの食害に遭いにくい」と聞き、円良田地区で試すことにした。

 早速、同年5月に住民対象のエゴマ栽培講習会を開催。試験栽培し、イノシシやシカの食害に遭わなかったことを確認。翌16年に同地区住民29世帯で生産者団体「円良田EGOMAクラブ」を立ち上げ、20年以上手付かずだった遊休農地を活用した共同生産を開始した。

 代表の田島国利さん(65)は「農地をきれいな状態に戻して子どもや孫に引き継ぎたい」と意気込む。

 16年12月には、町補助金を活用しエゴマ油を製造する搾油機を導入。町産えごま油「輝―KAGAYAKI―」が昨年11月、埼玉県ふるさと認証食品プレミアムに認証された。昨年は約3・5ヘクタールに種をまき、2ヘクタール分を収穫した。今年は4ヘクタールに種をまく予定で、収穫量を増やす方針。

 共同作業の成果も出ている。年数回のイベントで顔を合わせていた人たちとの交流が深まり、地域のつながりもより強くなった。生産者の妻たちも協力的で、地区外の女性同士の交流も始まった。

 田島さんは「年間を通して食べてくれる客を大事にしたい」と話す。同町でも「町全体に生産者を増やし、家族が1年間食べられるエゴマを生産してもらって自身で健康を維持してほしい」と期待を寄せている。

 問い合わせは、同センター(電話0495・76・3710)へ。

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