埼玉新聞

 

<新型コロナ>外出自粛の今だから 苦境のクリーニング店がPR、ゆるキャラの抗菌加工で受注舞い込む

  • 田辺明敏さんの指導を受け、着ぐるみを丁寧に洗浄する息子の敏樹さん=杉戸町

 新型コロナウイルスの影響でまちのクリーニング店が苦境に立たされている。外出自粛と節約志向でクリーニングに出すことが「ぜいたく」と捉えられ、家庭で洗濯できる洋服を買う傾向が強まっているとの指摘も。コロナ不況を乗り切ろうと、積極的なPR作戦を展開して新規開拓を図る店もある。

 「家庭での洗濯が増え、クリーニングに出すことがぜいたく化している。洋服の買い控えも顕著で、購入したとしても、クリーニングの必要がないファストファッションが増えている」。埼玉県の宮代町で家族経営のクリーニング店を営む近藤隆さん(41)は、コロナ禍を痛感している。同業者の下請けも行っているが、「廃業が増え、仕事がなくなっている状態」という。

 例年、4~6月の繁忙期で1年間の売り上げの大半を確保しているが、主力のワイシャツは3~4割減、売り上げ自体も平均3~4割減ったという。来年は5割減にまで落ち込む見通しで、「経費節減をしても埋められない状況」と嘆く。

 埼玉県クリーニング生活衛生同業組合によると、組合員約270人のうち9割を個人事業主が占める。体力の少ない個人店にとって、コロナの影響はより深刻だ。

 家族経営で「着ぐるみクリーニング」を手掛ける杉戸町の田辺明敏さん(53)の店も繁忙期の3、4月に入学式や卒業式、各種行事が軒並み中止となり、例年に比べて売り上げが2割減った。昨年は250体を受注した夏場もイベントの中止が相次ぎ、取引先の自治体や企業からの依頼はなくなった。

 危機感を募らせた田辺さんは「来る日に備えて地域のパワー“ゆるキャラ”を抗菌加工しませんか」と宣伝する着ぐるみクリーニングのダイレクトメール(DM)を作成。これまで付き合いのあった取引先150社に発送したところ、数社から注文を受けた。過去に取引のあった大手通信会社からも「イベントで使わない今だからこそクリーニングに出せる」と、185体の大量受注が舞い込んだ。

 ほかにも、さいたま市内の高校に出向いて洗濯教室を開いたり、自社工場で10年来不定期で催している一般向けの洗濯塾にも力を入れ、「洗濯は冷水より温水の方が効果がある」といった家庭で役立つ豆知識を伝授。ホームページも頻繁に更新し、今月に入って閲覧した各地のスキー場から「急ぎで対応してほしい」と新規の受注が入った。

 田辺さんは「地道な広報活動から顧客獲得につながったケースもある。先は見えないけど、今まで以上に積極的にPRに取り組み、何とか乗り切りたい」と語った。

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