埼玉新聞

 

大河ドラマの渋沢栄一から、コロナ禍の現代を生きるメッセージ伝えたい 制作統括の菓子浩さんが意気込み

  • NHKで来年放送の大河ドラマ「青天を衝け」で制作統括を務める菓子浩さん(NHK提供)

  • 深谷市血洗島の藍農家だった渋沢栄一を演じる吉沢亮さん(NHK提供)

 NHKで来年2月14日放送開始予定の大河ドラマ「青天を衝(つ)け」。主人公で埼玉県深谷市出身の実業家・渋沢栄一は約500の企業の設立に携わり、「日本近代資本主義の父」と呼ばれる。ドラマでは幕末から明治にかけての激動の時代、逆境にめげずに奔走した姿を生き生きと描く。制作統括の菓子浩さん(52)は「コロナ禍で先行きの見えない現代。渋沢栄一の生涯から、『生き抜く』というメッセージを発信したい」と意気込みを語った。

 大河ドラマの節目を飾る第60作となる同作品は、主人公の渋沢栄一が、時代の大渦に翻弄(ほんろう)され挫折を繰り返しながらも、高い志で未来を切り開いていく姿をダイナミックに描く。脚本は大森美香さん(48)、主演は吉沢亮さん(26)が務める。

 物語の序盤は、渋沢栄一の故郷・深谷市血洗島を舞台にした「若き人たちの青春記」と、栄一が後に仕える徳川慶喜にまつわる「緊迫の政治劇」の2本の軸で展開する。菓子さんは「大森さんの脚本の妙で、立場も身分も違う両者(渋沢栄一と徳川慶喜)の人生が、だんだん絡み合っていく。全く違う二つの物語が融和していくので、撮影していて非常に新鮮だった」と振り返る。

 血洗島のシーンは、群馬県内の農村にロケセットを組んで撮影。旧渋沢邸「中の家(なかんち)」や、少年時代の栄一がいとこで富岡製糸場の初代場長を務めた尾高惇忠の家に向かう際、論語を読みながら通った「論語の道」などを再現した。スタッフが自ら藍や桑を植えて作り上げたロケセットは四季折々で雰囲気が変わり、注目ポイントの一つだ。

 大河ドラマの構想は数年前からあり、「太平の世から新たな時代に移り変わる幕末を題材にしようと決めていた」。渋沢栄一を選んだ理由は「実業家としてはもちろん、福祉や教育など多方面で活躍している。私たちの暮らしに大きな関わりがあるけど、意外と知られていない人物」だったため。「決して順風満帆の人生ではない。逆境に立たされても、歩みを止めない姿に、人間っぽさを感じた」といい、その栄一の視点から「江戸から明治に変わる大転換期を描いてみたかった」と明かす。

 大河ドラマを取り巻く状況も、新型コロナウイルスの影響で撮影や放送時期が遅れるなど例年とは大きく異なっており、「作品に込める意味合いが変わってきた」と語る。

 「先の見えない時代という点では、幕末と通ずるものがある。渋沢栄一自身も、あす自分がどうなるか分からない中で、正しいと思うことを日々追い求めていた。コロナ禍の今だからこそ、『生きる』『めげずに突き進む』といったメッセージを、作品で伝えたい」と力を込めた。

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