埼玉新聞

 

“つぎはぎの美術館”歴史生かし改修へ…「原爆の図丸木美術館」の改修計画案まとまる 2025年秋頃着工へ

  • 都幾川のほとり、緑豊かなロケーションに位置する「原爆の図丸木美術館」。丸木夫妻が描いた「原爆の図」が常設展示されている=埼玉県東松山市下唐子

    都幾川のほとり、緑豊かなロケーションに位置する「原爆の図丸木美術館」。丸木夫妻が描いた「原爆の図」が常設展示されている=埼玉県東松山市下唐子

  • 都幾川のほとり、緑豊かなロケーションに位置する「原爆の図丸木美術館」。丸木夫妻が描いた「原爆の図」が常設展示されている=埼玉県東松山市下唐子

 建物の老朽化が進む「原爆の図丸木美術館」(埼玉県東松山市)は、14日までに新しい改修計画案をまとめた。2025年秋ごろから着工、約1年半の休館を経て、27年春にリニューアルオープンする予定。設立者である画家の丸木位里(いり)(1901~95年)・俊(1912~2000年)夫妻の遺志を継いで「建物の歴史」を生かしつつ、絵画保存のための収蔵庫やエレベーターを備えるなど機能性・快適性を高める。

 丸木美術館は、原爆の悲劇を描いた「原爆の図」を常設展示するため、丸木夫妻が1967年に開館。たった2部屋の平屋で始まった小さな美術館は増改築を繰り返し、現在は鉄骨造りや木造など五つの建物をつないでいる複雑な2階建て構造。老朽化により近年、「原爆の図」に虫食い被害が発生。危機感を抱いた同館は2017年に「原爆の図保存基金」を立ち上げ、寄付を募っていた。

 同館は21年に、スギを多用し木造化するイメージ一新の改修プランを発表していたが、資材の高騰などもあり構想を変更した。新しい改修計画案では、増改築で建物に刻まれた「変化の歴史」をあえて見せつつ、耐震性や断熱性の向上など建物をアップデートする方針だ。ハトのレリーフが特徴の外観は大きく変わらないという。

 計画案では、2階の展示スペースを広げ、原爆の図10点を並べる。1階には新たに収蔵庫を設置、残りの原爆の図4点を置く予定だ。さらに増築でできた、階段途中にある物置スペースなどを鑑賞の場として活用するという。設計を担当するのは建築設計事務所「ワイエスアーキテクツ」のいずれも建築士の斎賀英二郎さんと八木香奈弥さん。

 休館期間は約1年半の見通し。現段階で原爆の図の貸し出し先は決まっていない。丸木美術館の専務理事・学芸員の岡村幸宣さん(49)は「(丸木)俊さんは『つぎはぎの美術館』と言っていたが、無数の人が関わって美術館を拡張してきたのだろう。つなぎ目など今まで隠していた部分に、価値を見いだし、次代につなげていこうとする建築家に出会えた。今後も美術館が変わるという前提で、変化の歴史を見せながら改修する」と話している。

 基金に寄せられたのは約3億円。当初の目標金額はクリアしたが、資材の高騰などで改修工事費は約3億5千万円を超える見込みとなっており、同館は目標を4億円に修正した。

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