埼玉新聞

 

<熊谷6人殺害>怒りどこにぶつければ…妻子殺害された男性「検察が裏切った」 検察の不戦敗、職務放棄だ

  • 被告の無期懲役が確定することを受け、記者会見する遺族の男性=15日午後3時ごろ、東京・霞が関の司法記者クラブ

 熊谷市で2015年9月、小学生姉妹を含む男女6人が殺害された事件で、強盗殺人などの罪に問われたペルー国籍のナカダ・ルデナ・バイロン・ジョナタン被告(35)について、一審の死刑判決が破棄され無期懲役判決が確定することを受けて、妻子3人を亡くした遺族の男性(47)が15日、東京都内で記者会見した。

 検察側が上告を断念したことにより最高裁で争うことなく判決が確定することになり、「(検察に)裏切られた思いが強い。これで終わらせていいのか。心の中で揺れ動いている」と不満を語った。

 男性は事件で、妻の加藤美和子さん(41)、長女美咲さん(10)、次女春花さん(7)=いずれも当時=を失った。3人が殺害されてから16日で5年になる。男性は「毎年9月16日が近くなると、当時の記憶がよみがえってくる。長いようで短かった5年間だったが、悲しみは5年前と一緒」と打ち明ける。「判決への怒りや悲しみをどこにぶつけていいのか分からない」と、今も死刑が破棄されたことに納得していない。

 事件を巡って、裁判員裁判の一審さいたま地裁はナカダ被告の完全責任能力を認め、求刑通り死刑判決を下した。二審東京高裁は被告が心神耗弱状態で責任能力は限定的として無期懲役を言い渡した。被告側は判決を不服として上告したものの、東京高検は上告を断念。最高裁は9日付で被告側の上告を棄却した。

 同席した被害者代理人の高橋正人弁護士は、「検察の不戦敗であり、職務放棄。司法に裏切られた被害者は誰にすがればいいのか」と批判。その上で、控訴審の裁判員裁判制度導入や被害者への上訴権付与を主張している。

 男性は今後について、「自分のため、家族のため、何か手だてがないか考えていきたい」と複雑な心境を吐露。「諦めたくない。前例がなくてもいい。まだ戦いたい」と気持ちを奮い立たせるように話した。

ツイート シェア シェア