埼玉新聞

 

2年連続の快挙 春日部在住の画家、パリの国際公募展に入選 地元の狐伝説をモチーフ、日本美を際立たせる

  • サロン・ドートンヌ2020入選作品「子育狐 聖火の祈り」

 春日部市の備後須賀稲荷神社にまつわる狐(きつね)伝説をモチーフにした同市在住の画家大久保信子さん(50)の作品「子育狐 聖火の祈り」が、毎年秋にパリで開かれる国際公募展「サロン・ドートンヌ2020」に入選した。2年連続の快挙となり、大久保さんは「日本独自の文化である地域に根付いた伝説をモチーフにした作品が国際的な評価を受けたことは大変うれしい。地域貢献にもつながるのでは」と喜んでいる。

 「サロン・ドートンヌ」は、1903年に創設され、コンテンポラリーアートの中核的存在としてマティスやルオーなど著名な芸術家も参加した歴史ある公募展だ。大久保さんは昨年初挑戦し、春日部の空をモチーフにした水彩画で見事入選。今年は、昨年と作風が異なる日本画を制作した。「日本の画壇だとスタイルを変えるなと言われる。今回、作風を全く変えたので勝負できるか心配だったが、海外では関係ないと思った」と話す。

 作品は伝説に登場する親子3匹の狐の姿を、子の健やかな成長を願う親の祈りと重ね合わせ、神聖な人々の祈りの象徴的な存在として聖火とともに表現した。さらに岩絵の具を使うことで、作品に込めたメッセージに深みを持たせ、伝統的な日本美を際立たせることを狙ったという。

 歴史好きな「歴女」を自称する大久保さんは、これまでも歴史や自然に関連する作品を手掛けてきた。春日部にも多くの文化財があり、中でも備後須賀稲荷神社には狐伝説の名残があることを聞き、文献を調べ上げモチーフにすることを決めたという。「自分の中にある等身大の美、身近な環境の美しさを誇張せずに表現したかった」と大久保さん。

 大久保さんは、今後も日本美を感じられる風景や伝説をモチーフにした作品を手掛けていく考えで、「日本独自のものを海外に発信していきたい。また、日本古来の描き方を継承するため、小中学生向けに岩絵の具のワークショップなども手掛けられれば」と話している。

 作品は、10月14~18日までパリのシャンゼリゼ特設会場で展示される予定。

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