埼玉新聞

 

無農薬ワインの酒かす、静かな人気 小川のワイナリーが製品化、ケーキ店などからリピート注文相次ぐ

  • 「調理用果実酒」を手にする福島有造社長=小川町高谷の武蔵ワイナリー販売所

 小川町産の完全無農薬栽培のブドウを使った自然派ワインを醸造・販売する武蔵ワイナリー(小川町)では、一風変わった商品が販売中で、地元の飲食店や常連客の間で静かな人気となっている。商品名は「調理用果実酒」(500ミリリットル)。熟成中のワインから取り除いた沈殿物の澱(おり)を商品化したもので、日本酒における「酒かす」のようなもの。福島有造社長(52)は「完全無農薬・無添加のため、澱も安全で、うまみの塊。煮込み料理や菓子づくりにぴったり」と話している。

 ワインの製造工程では、熟成中に上澄みだけを取り出す「澱引き」の作業が行われ、澱は廃棄される。農薬や添加物を一切使用せず、原材料はブドウのみのため、沈殿した澱の液体を有効活用できないかと思案。地元酒蔵で杜氏(とうじ)も務める福島社長が「酒かす」にヒントを得て、今年2月に製品化し発売。常温では発酵が進むため、ペットボトル詰めを冷凍した状態で販売している。

 発売後、地元の飲食店に試供品として配ったところ、反響があり、コロナ禍の緊急事態宣言が明けるとケーキ店やカフェ、チーズ工房などからリピート注文が相次ぐようになった。プロの料理人の間でだけでなく、一般の顧客にも口コミで広がっている。「ワインの酒かすのような商品はたぶん初めてではないか。無農薬と無添加の栽培・醸造だからできること」と話す。

 同社では、JAS法(有機日本農林規格などに関する法律)で認められている農薬さえ使用しない完全無農薬のブドウ栽培を2011年から始め、14年から自社ワインを販売。酸化防止の亜硫酸塩や培養酵母も使わず、糖の添加も自主的に禁止。「JAS法で認められていても、じゃあその農薬をなめられるかと言われたら、なめられない。体に危険のないワインを淡々と造るだけ」と、自然のままの正直なワインづくりに徹している。

 同商品は開封後、冷蔵保管。価格は千円(税抜き)。アルコール分11%。調理用で、飲用には適さない。同社販売所(小川町高谷)で購入できる。

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