埼玉新聞

 

どうして閉店…心配の声、次々消える駅前書店 生き残りへ老舗本屋、駅ナカやめて“複合施設”にチャレンジへ 本屋とワークスペース&アートギャラリーが一体化した拠点誕生 すでに本だけでなくイベント運営も着手、向かう先は

  • 本屋にワークスペースを併設した複合施設「CHIENOWA BASE」=朝霞市本町2丁目

    本屋にワークスペースを併設した複合施設「CHIENOWA BASE」=朝霞市本町2丁目

  • 複合施設2階に設置されたワークスペース

    複合施設2階に設置されたワークスペース

  • 本屋にワークスペースを併設した複合施設「CHIENOWA BASE」=朝霞市本町2丁目
  • 複合施設2階に設置されたワークスペース

 通信販売やデジタルブックの普及により、駅前など街角の書店の閉店が相次ぐ中、朝霞市の老舗本屋が、ワークスペースを併設した複合施設をリニューアルオープン。社員研修名目の読書会や著者による講演会、地域で活躍する著名人のワークショップなどの利用を図る。地域コミュニティーの拠点を提供するとともに、地元企業や子どもたちの育成に貢献。地域と書店の新しい在り方にチャレンジする。

 リニューアルオープンしたのは、朝霞市本町2丁目の複合施設「CHIENOWA BASE」。鉄骨2階建てで、1階に本屋「CHIENOWA BOOK STORE 一進堂」、2階に約150平方メートルのワークスペースとアートギャラリーを開設した。書店を経営する「一進堂」(山崎幸治社長)がワークスペースと本などを活用し、地域活性化事業に取り組む。

 事業内容は、「One Book Sharing」と称して、ビジネス本など一冊の本をグループで読み、感想や意見を共有する企業研修の場を提供するほか、事業所の通用口などに本棚を設置し、提供された本を社員が読むことで、社内のコミュニケーションの促進と人材育成を図る。

 また、著者の講演会を仲介したり、ワークスペースを会議室や勉強会、各種イベントなどに提供するほか、アートギャラリーを開設。1階と2階の階段通路には、企業の求人広告などを掲示したり、ディスプレイによるデジタルサイネージを設置し、地域企業を支援する。

 一進堂は戦後直後の1947(昭和22)年に開業。東上線朝霞駅の駅舎をはじめ朝霞市と和光市で8店舗の書店を運営していたが、読者層の減少により朝霞駅舎がリニューアルした2010年には同駅舎の店舗だけとなった。その後も本の販売は右肩下がりが続く。

 こうした中、同社は事務機器の販売など新規事業を拡大する一方、子ども大学など市内のイベントの運営に携わるなど地域の活性化に取り組んでいる。このため、ワークスペースを併設した地域コミュニティーの拠点となる複合施設を計画。昨年12月に駅舎の店舗を閉店した。

 同社は「閉店した時は、『どうして閉店したのか』と心配する声が寄せられた。今は本を売るだけでは生き残れない。地域と企業を大切にし、交流を広げて共生することにより地域を活性化していきたい」と新しい事業に期待を膨らませている。
 

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