埼玉新聞

 

台風や洪水…避難所での感染予防やプライバシー保護に 春日部市、避難所用の間仕切りシステムを導入

  • 避難所用間仕切りシステムを紹介する建築家の坂茂さん

 避難所でプライバシーの保護と新型コロナウイルスの感染予防を図ろうと、春日部市は建築家坂茂(ばん・しげる)さんの「避難所用簡易間仕切りシステム」を導入、同市中央公民館で3日、供給に関する協定を結んだ。協定は県内初で、坂さんが使用法やメリットを紹介した。

 間仕切りシステムは長さ2メートルの紙管を梁(はり)と柱に使用し、カーテン状の布でほかのスペースと境界を隔てる。2メートル四方のユニットを紙管で連結し、家族の人数などに応じて、区画を広げることが可能だ。

 市は今回、システム560ユニットと簡易ベッド280セットを計約760万円で購入。職員研修などを通じて活用の仕方を広め、台風や洪水発生時の避難所開設に備える。

 坂さんは大分県立美術館、静岡県富士山世界遺産センターなどを設計建築しており、米プリツカー賞を受賞するなど世界的建築家として知られる。NPO法人「ボランタリー・アーキテクツ・ネットワーク」代表として、災害支援にも取り組む。

 この日、同公民館を訪れ、石川良三市長と協定書に署名。実際のシステムを紹介した坂さんは「避難所生活で、プライバシーは人権上、最低限守られなければならない大切な問題。新型コロナの影響もあり、クラスター感染の予防にもなる」と間仕切りの有効性を強調した。

 坂さんは1995年、阪神淡路大震災を機に、避難所支援の取り組みを開始。更衣室や授乳室、間仕切りシステムを開発した。2011年の東日本大震災では、東北各地の避難所で間仕切りシステムが活用され、計1795ユニットが設置されたという。

 坂さんによると、東日本大震災の際、ユニットを現地に持ち込んだが、当初は前例がなく、各避難所で設置を拒まれた。一方、16年の熊本地震では、事前に連携していた大分県を通じて、熊本でユニットを活用できたと報告した。

 坂さんは「避難所が開設されてから、ユニット設置となるとどうしても時間がかかる。自治体との事前の連携が不可欠で、今回は夏前に協定を結ぶ事ができて大変感謝している」と話した。

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